26歳独身、彼女なし 平凡な独り暮らしに猫が転がり込んできた ～ラッキースケベってなんですか？！～

第19話 新生活！ これからずっとよろしくね！！

「よし！　これで運（はこ）び出（だ）しは終（お）わり！　あとは私（わたし）たち自身（じしん）が新居（しんきょ）へ行（い）くだけ！！」

　バタバタしたけど、1月中（がつじゅう）に向（む）こうへ移（うつ）れることが出来（でき）て良（よ）かったよ。

「そのぶん、年明（としあ）け早々（そうそう）から大変（たいへん）だったけどね」

　ミケコに頼（たよ）っちゃったね。一気（いっき）に決（き）まったんで。

「たぁ坊（ぼう）は仕事（しごと）しごとだったし。ねこだけの連中（れんちゅう）に貸（か）し作（つく）ったのは、ちょっとアレだけど」

　ごめん。

「別（べつ）にぃ。あやまることはないけど。頼（たよ）ってもらったのもけっこううれしかったし」

　僕（ぼく）としてはねこまた協会（きょうかい）には感謝（かんしゃ）しかないよ。会長（かいちょう）さんにはあの部屋（へや）を紹介（しょうかい）してもらったうえに、ミケコが高校（こうこう）に通（かよ）えるようにもしてもらえたんだから。

「ああ！　もう！　それが一番（いちばん）、めんどい！！」

　ねこまた協会が手伝（てつだ）う条件（じょうけん）。人間世界（にんげんしゃかい）をもっとちゃんと学（まな）ぶこと。僕には願（ねが）ったり叶（かな）ったり。きっとそれで寝（ね）てる時（とき）のこととか、ミケコはもっと自分（じぶん）をコントロール出来るようになるよ。

「逃（に）げ場（ば）なくすんだもんなあ、もう……」

　ハハハ。

「……」

　どうしたの？

「なんもなくなっちゃったね」

　そうだね。家具（かぐ）がなくなるとがらんとして、昨日（きのう）までここで過（す）ごしていたのがウソみたいだ。

「あーね。でも、落（お）ち着（つ）かない！　猫的（ねこてき）にはなんもない、隠（かく）れるとこもないってのが」

　そっか。

「なぁんか、ミケコちゃんが見（み）るに、たぁ坊のほうがしんみりしてるけど？」

　そうかも。寝（ね）に帰（かえ）るだけだったようなこの部屋（へや）も、最後（さいご）には帰（かえ）るのが待（ま）ち遠（どお）しくなってたから。

「私が待ってるから？」

　うん。

「お、素直（すなお）じゃん」

　ミケコ……。

「な、なに？　じっと見詰（みつ）めちゃって。告白（こくはく）？　なんちゃって！」

　うん。

「え？　マ？！」

　ミケコ、僕からちゃんといってなかったけど。

「う、うん……」

　好（す）き、だよ。こんな僕に寄（よ）り添（そ）ってくれて。出来（でき）ればずっと一緒（いっしょ）に、これからもずっと。

「やっと観念（かんねん）した！」

　ちょ、ミケコ……！

「これが私の返事（へんじ）！　出来れば、じゃない！　ちゃんと抱（だ）きしめて！！」

　は、はい。

「よろしい」

　えーっと……。

「……」

　なんか、あの……、外（そと）の音（おと）がよく聞（き）こえるね。

「たぁ坊さ」

　うん？

「僕みたいなとか、こんなとか、自己評価（じこひょうか）低（ひく）いのやめなね。助（たす）けられてるのは私のほうだから。おたがいさまでいいじゃん」

　うん、ありがとう。それで、あのぅ……。

「もうちょっと」

　うん……。あ、そうだ。落（お）ち着（つ）いたら、おばあちゃんのお墓参（はかまい）りに行（い）こう。

「それは決定事項（けっていじこう）？」

　イヤ、かな？

「ヤなわけないじゃん！　ちゃんと恋人同士（こいびとどうし）になりましたって報告（ほうこく）なわけだし」

　ま、まあ……。

「でぇも、告白としては失格（しっかく）かな！」

　そ、そう？

「告白して、抱きしめて、そしてやっぱ！　熱（あつ）い口付け（キッス）でしょ、そこは！」

　善処（ぜんしょ）します。

「プッ！　善処だって、ウケる。告白やり直（なお）す気（き）か！　マジメか！　ま、たぁ坊らしいか。良（よ）き❤　これからはいっぱいキスしようね」

　キスを？！　いや、まあ……、な、慣（な）れれば、ね。

「慣れるくらいにはするつもりあるんだぁ。スケベ」

　それはミケコが！

「フフン。言（い）い訳（わけ）は見苦（みぐる）しくてよ。たぁ坊、ハグにも全然（ぜんぜん）慣れてない♪　ゆうて、私もドキドキだけど」

　おたがい恋愛（れんあい）初心者（しょしんしゃ）だもんね。

「ミケコちゃんも経験（けいけん）ないって決（き）めつけないでくださぁい」

　いたずらっぽく笑っても、恋愛経験ないことは僕でも分（わ）かります。

「おもしろくない！　じゃあ、はい」

　握手（あくしゅ）？

「うん。これくらいから始（はじ）めよう」

　今（いま）までありがとう、これからもよろしく、ってところかな。

「そういう感（かん）じ♪」

　ミケコ……。

「うん？」

　大好（だいす）きだよ。

「照（て）れるね、やっぱ。面（めん）といわれると」

　僕は今までさんざん、ミケコに恥（は）ずかしい思（おも）いをさせられていました。

「キャハハハ！　これからもそういう感じだろうけど、よろぉ！　さ、私たちの新居へ！　ドキワクの新生活（しんせいかつ）へ！」

　行こうか。

「外（そと）でも手（て）、離（はな）さないでね」

　そ、それはさすがに……。

「私は離さないからね！」

（キィー……、パタン）

　　　　　　【おしまい】