第10話 同居生活の終り


 5歳児の姿になったリチャードは、再び成長し直さなければならなくなった。

 ある意味やり直しなのだが、本人はちっとも嬉しそうではなかった。

 王立魔法学園は12歳から16歳までの子供たちが通う学校であるため、5歳児のリチャードは肉体年齢的に問題ありとされ、学籍は一時凍結、ある程度成長するまで休学することになった。


 リチャードの領主館行きが決まり、エディリスとフローリスは学園の寮に入って学園生活を継続するよう義父から通達があった。

 フィッシャー邸は一時閉鎖、メイドのパメラは別の職場への異動が決まった。



 * * *



 王都リンデベルグの舗装された道を魔導馬車は走っていた。

 流れる外の景色を見ながら、エディリスは物思いにふけっていた。

 魔族に死体に寄生生物、フィッシャー邸での出来事は理解の及ばないことばかりで、まるで夢でも見ていたような気分だった。

 リチャードとの婚約も白紙に戻り、姉妹は新たに嫁ぎ先を探すことになるだろう。残念なようなホッとしたような複雑な心境だった。


 エディリスは向かいの席で本を読んでいる元メイドに視線を移した。

「パメラにはすっかりお世話になったわね」

「問題ない。仕事だから」

 パメラはもうメイドではないので、敬語は使っていなかった。

「メイドをやめた後どうするの?」

 フローリスが尋ねた。

「前の職場に戻る」

「そうなんだ、どこの職場?」

「塔のある街ゲイルズベルグ」

「そっか、そこに行ったらまた会えるんだね」

「ん」


 途中でパメラを降ろし、エディリスとフローリスを乗せた魔導馬車は王立魔法学園の寮に向かって走り出した。




【おわり】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

義兄の館で溺愛生活。~婚約者候補になったので義兄の館で同居生活を始めたら溺愛されて困っています~ シュンスケ @Simaka-La

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ