第8話

 それから数年の月日が流れる。アークは村! という程ではないが、少しずつ人が増え、いまでは10人が暮らしている。俺とアリシアは雑貨屋をやっていて、一緒に暮らしていた。そんなある日、武器屋をしている一人の住人が問題を起こそうとする。


「カーソン! だからその取引は後で揉め事になるから止めてくれって、何度も言ってるだろ!」

「ふざけるなッ! 楽して儲けられるんだ。そうすれば村だってもっと発展する! みんな、それを望んでいるはずだ!」

「いいや、望んでない! ここに来る人達は穏やかな生活を望んで、ここに来ているんだ。勝手なことを続けるなら、カーソン、村長の権限でお前をアークから追放する」


 いきなり胸倉を掴まれたが、俺は動じることなくカーソンを睨みつける。


「なんだと!? てめぇ、後で後悔しても知らねぇからなッ!! 覚悟しておけよッ!!」


 カーソンは捨て台詞を吐くと、押す様に俺の胸倉から手を離し、離れていった──。


「ノア、カーソンを追い出して良かったの? あの人、性格は残念だけど、すごく優秀だったんでしょ?」と、後ろからアリシアが話しかけてくる。


 俺がアリシアの方に体を向けると、アリシアは眉を顰めて不安そうな顔をしていた。


「別に構わないよ。優秀だからって、あぁいう奴を野放しにしていると、村の雰囲気が悪くなる。利益が落ちたって、平穏に暮らしていける方がずっと良い」

「そうだね」

「それよりアリシア、ちょっと散歩しないか?」

「散歩?」

「隣のおばさんが綺麗な花畑を見つけたっていうんだ。一緒に行こう」

「うん! 行く行く」


 ──こうして俺達は数十分程かけて、花畑に移動する。確かにおばさんの言う通り、辺り一面の花畑で、目が奪われる。


「綺麗……綺麗だね、ノア!」

「そうだね、アリシア」

「わぁ……」

「──なぁ、アリシア」

「なぁに?」

「もう直ぐアークが誕生して三年ぐらいになる。人数も増えてきた。だから……大丈夫なのか?」

「え……大丈夫って何が?」


 アリシアは俺との約束を忘れている様で、不安げに俺を見つめる。


「何がってお前……自由になりたいって言ってただろ? それは良いのかってこと」

「あぁ……大丈夫だよ!」

「本当に大丈夫なのか? 俺は村人たちが居るから寂しくない。お前が望むなら、止めたりしないぞ?」


「え、何それ。私に出て行って欲しいの?」と、アリシアは言うと不満げにホッペをプクッと膨らませる。


「いや、そんな事ない。そんな事ある訳ないじゃないか。本音を言うとずっと俺の側に居て欲しいと思ってる」

 

 それを聞いたアリシアは機嫌が直った様でホッペを解放し、俺に近づく。そして優しく俺の腰に手を回し、抱きついてきた。


「だったらそんなこと、言わなくても良かったじゃない」

「……そうだな、本当にそうだ」

「ふふふ……本当の事を話すとね。政略結婚したくなかった理由はもう一つあったんだ」

「もう一つの理由? 何があったんだい?」

「それはね……ノアと結ばれたかったからだよ! あなたに森で助けて貰った時から私、ずっとノアの事が気になっていたの」

「! そうだったのか」

「うん、そうじゃなければ痴女じゃあるまいし、一晩なんて言わないよ」

「そうか、安心した」


 俺は告白され、更にアリシアが愛おしくなり、ギュッと抱きしめる。


「──村に帰ったら、神父様を探さないとな」

「それより先に教会を建てないとじゃない?」

「あー……そうだな。だったら腕のいい大工を探さないと……」

「あ、大工さんを見つけるなら、新しい家が欲しい」

「なるほど、それは良い」

「ふふふ、やる事はいっぱいね」

「うん、でもその方が楽しいじゃないか」

「えぇ、そうね。その方が楽しい!」


 ──こうして俺は気に入らない奴は追放し、誰にも束縛されないスローライフを満喫する! 時には問題ごとも起きるだろうけど……俺には解決できるだけのチートなスキルがある。これからもずっと……俺はこの素晴らしい人生を楽しんでやるッ!!

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追放できるチートなスキルを持っていると気付いた俺は、望んだものを追放して、ストレスのない生活を送る。 若葉結実(わかば ゆいみ) @nizyuuzinkaku

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