第17話 愛を確かめる
それからというもの、ミルガルム帝国は女帝ドローレス・ミルガルムが国政を取り仕切り、ルシウス・マーシャル公爵子息が外交のすべてを取り仕切るという、二人三脚の政治スタイルとなった。
そして私は――。
「お言葉ですが女王陛下、ティアナ姫への愛はこのルシウス・マーシャルの方が勝っております!」
「馬鹿を言うなルシウス。私こそがティアナを一番愛している! それだけは譲れない!」
言い争いを続ける二人の間に割って入って、私は両手で二人を制した。
「ルシウス様、お姉さま! あまり争っていますと『ティアナポイント』を減点しますわよ!」
私の一言に二人が青ざめる。
「そ、それだけはご勘弁くださいティアナ姫。せっかく先日の外交で成功をおさめ、100ポイントまで残り3ポイントになったのです!」
「そうだぞ、ティアナ! 私だってもうすぐ100ポイント貯まりそうなのだ! 減るのは困る!」
「じゃあお二人とも、喧嘩をしないでください!」
二人はしょんぼりしながらそれぞれ執務に戻っていく。
ティアナポイント。
仕事を頑張ると1ポイントずつ加点され、喧嘩をすると減点される。100ポイント貯まったら、私を一日好きにしていいという特典付きの、ちょっとしたゲームだ。
このシステムを導入してからというもの、二人はさらによく働くようになった。
夕刻。
仕事の合間にルシウス様に誘われ、私とルシウス様は中央庭園を訪れた。
色とりどりの花が咲き誇り、綺麗だ。
ベンチに座りながら、ルシウス様が私を自分の膝の上に乗せた。後ろから私を抱きしめ、ダークグリーンの私の髪に彼の唇を這わせている。
「ティアナ姫、貴女は良い匂いがしますね」
ルシウス様がうっとりと言う。私は振り向いて、彼の首筋に自分の顔を近づけた。
「それはルシウス様もですわ。甘くて、良い匂いがします」
ルシウス様と触れ合うこのひと時が、私は大好きだ。
目を閉じ、ルシウス様の香りを堪能しようとする。すると、不意に何かが唇に触れた。驚いて目を開ける。私の視界がルシウス様でふさがれている。
視界だけではない、私の唇も、ルシウス様の唇でふさがれている。
「……! ん、ん……!」
驚いてルシウス様の胸を押しのけようとすると、ルシウス様はもっと力強く私を抱きしめた。身体は強引なのに、キスは怖いくらいに優しい。
何度も唇を重ね、快楽に落ちていく。
「愛しています、ティアナ姫」
ルシウス様が私を見つめて言う。綺麗な赤い瞳に、幸せそうな顔する私が映っている。
「私も、愛しています。ルシウス様」
私の返事を聞いて、ルシウス様は満足そうに笑った。そしてまた、私の唇を奪う。
心地よい。満たされる。幸せな、熱。
私たちは互いに愛を感じながら、ゆっくり、何度も、その愛を確かめ合った。
―― 了 ――
ルシウス様、お姉様に張り合わないでください! 無限大 @mu8gen8dai
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