朝。

私は風呂の記憶しかないぞ。

私の記憶では風呂に入ったまでの記憶しかないのに、今何故かベッドの中にいる。

―――デジャヴを感じる。


ベッドから立ち、リビングへ向かう。

リビングには、包丁をもって料理している司さんの姿が見えた。


「おはようでーす…」

「おはようございます。よく眠れましたか?」

「入院してたときより深い睡眠ですね。」


私貧乏だったというか、クソ親だったというか。

まともな寝具で寝たことがない私なので、あのベッドは私をダメにした。

あんなに快眠とは思わんよなぁ。人生の目標が一つ達成されたぜ!


「ところで、私は風呂の後何をしていたんでしょうかね?」 

「そのことですか、まったく貴方って人は!」


ほっぺを膨らませた顔で、私に向き合う。


「貴方にとって、あの風呂はとても良いものだったかもしれません!ですが、風呂の中では寝ては行けません!私大変だったんですから!!!」 

「あっはー………さーせん。」

「次はないですからね。」

「ひゃい」


申し訳ねぇっす。

やっぱ、今のものにあまり浸りすぎるのやめよ……

でも、私にとって久々すぎた風呂だったからなぁ……

しかも、あんないい風呂だったんだよ?

私には抵抗できません。


と、私は結論付けた。


「そろそろ朝食ができるので、テレビでも見て待っててくださいね。

今日はフレンチトーストですよ。」

「な……あのフレンチトースト……?」


本当に………?

私が友達に自慢されて朝に食べたいランキング第一位であるあの……!?

本当に朝に食えるのか……!


「何を驚いているのですか?もちろん、腕によりをかけて作りますので楽しみにしててくださいね。」

「ハイ神様仏様いくらでも待ちます昼すぎても待ちますテレビ見て待ってますね〜!!」


ああ……!

神様は本当にいるのだ…!

やっぱ異世界転生してるよな私。

前だったら、あんなベッドでねるところか寝れてないし、朝にご飯食えてさらにはあんな豪華なもんだもんなぁ……!!

思わず頬が緩んでしまうってもんよ!!


ウキウキな気分の私はでっかいテレビの電源をつけた。

テレビに映し出されるのは、どうやら青級ダンジョンを踏破した異城攻撃者達へのインタビューだ。


―――異城攻撃者ねぇ。

今の私は当然無職だ。

この世界は15から成人になるので、14の私はどうにかしなくてはならない。

なのに、私には学歴がないので、職に就くのがとても難しいのだ。

その点、赤級である司さんの養子になるので、異城攻撃者で稼いだ方が色々融通が利くだろうし、先も明るい。

問題は、異城攻撃者になるためのダンジョンに潜るための知識、魔法の知識すらないからだ。

―――これがどうにかできなかったらバイトで働き潰れるしかねぇ……


そもそも、私は異城攻撃者はあまり乗り気じゃない。

事故で死ぬ確率が高いし、私危険なことやりたくないし。

―――私は死なずに、安全に生きていたいのだ。

とはいえ、それ以外に方法あんのかなぁ………


私の将来について考えに浸っていると、司さんが私の肩を叩き私を呼ぶ。


「できましたよ。おや、異城攻撃者に興味があるんですか?」


と司さんは物珍し目で私を見る。


「てっきり、私はダンジョンの仕事には就かないと思っていましたよ。」

「あいや、たまたまですよ。」


そう答えると彼女は懐かしそうにテレビを見る。

なにかあるのかな?

そう思ってるうちに、彼女は話しだした。


「今でも彼女を思い出します。初めは、貴方がボロボロの彼女を連れてきたのが始まりでしたね。」

「へぇ〜そうなんですか。因みに誰なんですか?」


私、そんなイケメンなことしたっけな?

入院前の記憶あやふやだから覚えとらん。

司さんともだったし。

司さんは頭にハテナマークを浮かばせて私に言った。


「覚えていないのですか?現在日本で三人目の級である――神水柚乃《かんみずゆの》―――貴方の唯一の親友であり幼馴染でしょう。」


それに対し、私はこう言った。


「え誰ぇ……」


と。

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事故で1年寝てたワイ、激重感情とチートを手に入れた知り合いから逃げたい。 @kanariaarcana

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