桃
鬼ヶ島の侵略からしばらくしたころ。ある選挙にオラトモが立候補しました。
たちまちその事象は話題になり、同年代の若者から莫大な人気を得ました。案の定オラトモはその選挙で当選しました。オラトモは止まることなる進み続け他の年代の票の大半も占めています。
オラトモはそのうち総理大臣になることができました。支持率も過去最高を記録し、史上最高の総理大臣と呼ばれるようになりました。
そんなオラトモの最後は何とも呆気ないものでした。オラトモが民衆の前で演説をしているときに一角から爆発音が響きました。爆発音とほぼ同時にオラトモは後ろに倒れました。眉間を一発撃ちぬかれて即死でした。その場は悲鳴と恐怖で支配され、大騒ぎとなりました。銃を所持していた犯人はその場で捕まりました。
しかし、不思議なことが起こりました。犯人の身元が一切判明しないのです。より正確に言うなら、犯人の家族、知人、その地域に住んでいる人々。そのすべての人の出身地しかわからないのです。出身地は全員揃って鬼ヶ島に一番近かった島です。
不思議なことはもう一つありました。オラトモは次の日から酷評されていたのです。今までの評価が嘘だったかのように史上最低の総理大臣だと呼ばれ始めました。そのうちオラトモという名は忘れ去られ、教科書にも載ることはなくなりました。
これは、ある島のお話です。その島に生まれた少年は生まれながらにして言葉を発することができました。それはその島では普通のことでした。その少年はすくすくと育ち、その島の中心にある神社の神主になりました。神主になって最初の仕事はは近くの偽島に上陸し様子を確認することでした。
青年は船に乗り、偽島に向かいました。島の中心には現代では到底再現できない技術で作られた機械がありました。青年はその機械に手を伸ばしました。空中に画像が出力され、青年はそのパネルを操作します。十分ほどパネルを操作していると、機械が音を立て始めました。青年はパネルを消すと、機械から離れます。機械から離れて少しすると、機械から光が出始めました。青年は光を確認すると島から出ていきました。これは、オラトモが生まれる前の話です。
それから少ししないうちに鬼ヶ島の話題が上がりました。オラトモの両親はそのタイミングで偽島から一番近い島に訪れました。迷わず中心の神社に向かっていきます。神主は両親の正体に気が付き、両親を殺しました。青年は再び偽島を訪れ、機会を操作しました。すると、今まで何もなかった鬼ヶ島に荒廃した村が生成されました。質量を伴う幻影です。
オラトモが島を訪れました。青年はオラトモに偽の情報を流し、鬼ヶ島に攻撃するように仕向けました。それから起こったことはご存じのはずです。
オラトモが演説をしています。青年は仕事のために島を出てオラトモの演説を聞いていました。その手には本来所有が認められていない拳銃が握られています。周りの人は一切気が付いていません。
青年は拳銃をオラトモに合わせて引き金を引きます。発砲音が響き、オラトモが後ろに倒れます。青年は満面の笑みを浮かべ、その場に立ち尽くします。そのうち警官が来て逮捕されましたが、変わらず満面の笑みでした。
青年はその覚醒者を殺すために神主になりました。偽島の一番近くの島、鬼ヶ島の住民代表して。そして、これからも神主は殺されるでしょう。覚醒者を殺すために。
外ン堕異 篠原 亡 @Shinonaki
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