永遠の満月

葉月花と結衣花は、互いの視線を交わしながら沈黙の中に立っていた。風が髪を揺らし、遠くで聞こえる子供の笑い声が徐々に消えていく。


「…結衣花、今日も、同じ夢を見たの。」葉月花が口を開く。結衣花の瞳が優しく揺れる。


「どんな夢?」結衣花が微笑みながら尋ねる。


「…君と、ずっと一緒にいる夢だよ。」葉月花の声は震えていたが、その眼差しには確かな決意が宿っていた。


結衣花は一瞬驚いたが、その後すぐに優しい笑みを浮かべた。「それは、素敵な夢ね。」


葉月花は結衣花の手をそっと取る。「夢じゃなくて、現実にしたい。君が隣にいてくれるなら、私は何も怖くない。」


結衣花はその言葉をしばらく味わうように噛みしめた。そして、ゆっくりと頷いた。「私も同じ気持ち。あなたと一緒にいると、どんな困難でも乗り越えられる気がする。」


二人の間にある距離は、いつの間にか自然と縮まっていた。葉月花は結衣花を優しく引き寄せ、互いに肩を寄せ合う。


「これから、私たちの物語が始まるんだね。」葉月花が囁くように言うと、結衣花はその肩に頭を預けた。


「そうだね。でも、私たちはもう始まっているのかもしれない。」結衣花の声は穏やかで、安心感に満ちていた。


その瞬間、二人の心が完全に一つになった光が二人の影を覆う。


「未来はどんな形になるか分からないけれど、君と一緒なら、それで十分。」葉月花の言葉は、結衣花の心に深く刻まれた。


「私も、ずっと一緒にいよう。」結衣花はそっと目を閉じた。


二人は、ずっと続く未来への思いを胸に抱きしめながら寄り添い合っていた。




***************





夜が訪れ、満月が湖の上に大きく浮かんでいた。湖面はまるで鏡のように静かで、月光が銀色の波紋となって揺れている。葉月花と結衣花は、湖畔に並んで座り、自然の静けさに身を委ねていた。


風がそよぎ、二人の間に流れる空気は優しく穏やかだった。結衣花がそっと手を伸ばし、葉月花の手を握る。冷たい夜の空気とは対照的に、その手の温もりは心地よかった。


「…満月、すごく綺麗だね。」葉月花が湖面に映る月を見つめながら言った。


結衣花はうなずき、葉月花に目を向ける。「本当に。月がこんなに大きく見えるのは、君と一緒だからかもね。」


葉月花は微笑み、結衣花に寄り添うように肩を寄せた。「この場所、いつかまた来ようね。私たちの特別な場所にしたい。」


結衣花はその言葉に安心感を覚え、優しく頷いた。「そうだね。ここに来るたびに、今日のことを思い出すんだろうな。」


湖の向こうから小鳥の囀りが響き、二人はその静寂の中でさらに心を通わせていく。波音がゆっくりと寄せては返し、時間がゆっくりと流れていくのを感じる。


「結衣花、ずっとここにいたい。満月の夜、こうして君と一緒に。」葉月花の声は柔らかく、温かかった。


「私も、ずっと一緒にいたいよ。」結衣花は葉月花を見つめ、その瞳に映る月の光を見つめた。


湖畔の静けさが、二人の心を穏やかに包み込む。彼女たちはその瞬間、永遠のように感じられるひとときを共有していた。


夜空に浮かぶ満月が、二人の未来を照らし続けるかのように、静かに輝いていた。

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満月のキス 紙の妖精さん @paperfairy

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