世界を救ったが、好感度が逆転した

Old Voice

世界を救った、そして忘れられた


俺は意識が研ぎ澄まされるのを感じる

数多の困難を乗り越え、遂に辿り着いた諸悪の根源。またの名を【終焉】


全人類に平等に訪れる厄災、それは死

それは数多の形を成して人類に降り注ぐ

それに抗う為に俺たち英雄連合軍が生まれた


ここまで来るのに何人も死んだ。その数だけ希望のバトンは受け継がれた。そのバトンはいつの間にか希望の剣となり、【終焉】に向けられた。


剣を握る俺は、【終焉】に目を向ける。

外なる神、この世界には存在せず、多次元から

干渉する存在。俺はやつを見定める。


体は黒い粘つく粘土のようだが、人の形を保ち、頭と思える部分には瞳がある。


その瞳は俺が手に持つ剣を見て、怯えている


ここまで来るのに、長い年月がかかった。

しかしこの戦いもここで終わる


「今度はお前が終わる番だ!!」


俺はそう言いながら、剣を【終焉】に振り下ろす


時間が長く感じる。振り下ろす剣では無く俺を

覗く【終焉】


剣は【終焉】を切り裂き、形も無く霧散していく


ただ、切り裂く間際に、やつは俺にこう言った


「ツギはオマエだ」


ただ、それがやけに鮮明に記憶に残り

忘れられなかった。




◇◇◇


俺たち連合軍は【終焉】が散った事により、

崩れ始めた異空間から脱出した

そして出発地点であった霊峰に戻ってきた


それは絶景だった


【終焉】によりもたらされた最初の厄災

太陽を奪う事。それにより久しく見てなかった陽光が、世界に降り注ぐ。俺はその光景を見て、泣く仲間と共に死んで行った数しれない英雄を想った。



その事は世界中が知ることになった


家から出ず、いつ来るか分からない厄災に震えるだけの日々も今日で終わった。家から差し込む陽光に目を瞑る。夢か、現実か、分からないまま

外に出る。周りに自分と同じ人々を見て、これが現実と知り、あらゆる人々が隔たりを忘れて喜ぶ。安寧の日々が戻ってきたことに



◇◇◇



しばらくしない内に、俺たちが成し遂げた事は全世界に広められた。最初は100を超える英雄連合も、いまでは俺を含め6人と少なくなってしまった。


しかし世界には余裕がなかった、だから

俺たちは、自分たちの持つ力を使い、国を復興したり、国同士を繋ぐ橋渡しをした。そんなお陰か、俺たちは世界機構の要職として就くことになってしまった。世界を救った英雄に相応しい役職だと、人々は口にした


俺たちは【光の6人】と呼ばれ、世界から

賞賛された。


正式な紹介の際には、世界共通で報道を行い、

様々な賞や御礼を受けた


俺はその時に余りにも緊張して、仲間にからかわれてしまった。


平和な日常、俺たちが掴んだ、安寧の日々

その光景に、胸が暖かかった。



◇◇◇


俺は朝目が覚めると、何故か外に放り出されていた。俺はお世辞にも世界機構の第1席として

復興中の母国で力を奮っていた。昨日は頑張りすぎたせいか、倒れるように寝てしまった。

しかしチェックイン時刻は過ぎていないのに


この扱いはあんまりだ!


俺はそう思い、エントランスの人に話しかける。


「なぁ、申し訳ないが、なぜ俺は外に出されていたんだ?」


エントランスに居る、色白の女性は俺を見て

何も反応しない


「なぁ?なぜ無視をすッ!?」


ゴスっ!


俺は何故か後ろにいた男に突き飛ばされ

その場で尻もちを着いてしまう


「すいません、鍵を忘れてしまって部屋に入れないのですが、、」


「はい了解しました!すぐに対処しますね!」


申し訳なさそうに謝罪をする男と、それを心地よく受け入れる受付嬢


俺は理解ができず、スマホを見る。



スマホには仲間たちの連絡先がひとつもないどころか、SNSなどが軒並み消滅していた。俺は何かが起きていることを悟り、外に出る。誰も俺の事に興味を持たない。


話しかけようにも、無視をされ、ぶつかられて、まるで俺がここにいないように


俺は少し寂れた商店街で、テレビがありそこに報道される内容に驚く


「今日もあの!【光の5人】の天才発明家

ユーベルさんにより、様々な技術が発明されました!それを順を追って紹介していきます!」


光の5人?、、、6人のはずなのに

俺はその内容に驚き、スマホで調べてみる


「ない、、ない、ない、ない」


どこにも俺のことが書かれていなかった

まるで俺の事だけが空白になったように

消えて無くなっている。


その瞬間俺はあの声を思いだす


「ツギはオマエだ」


その言葉が現実味を帯びてくる

やつは単一の個人には何もしてこなかった

それは有象無象の蟻や虫を認識できないように

外敵としても、群れとして見るように


だからこそ、俺だけへの厄災


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