第3話 10日間の招集会②

勇神真人の家に到着して、初めての夜が訪れた。竜磨くんたちが住んでいる星と比べると、勇神星の夜は少しばかり温度が高く、まとわりつくような湿気が肌に感じられた。寝る前に、竜磨くんは隣に座っている真人さんに、素朴な疑問をぶつけてみた。


「ねぇ、真人さん?今って季節でいうと、僕たちの星でいう、どこらへんになるの?」


真人は少し考えてから、「えーっと、君たちの言葉で言うなら、夏、ってところかな?」と、にこやかに答えた。それを聞いた竜磨くんは、「そうなんだ~!だから、こんなに暑くてムシムシするんだね。よーし、わかった!じゃあ、おやすみー!」と、納得したように言って、自分の布団にもぐり込んだ。


「はい、おやすみ、竜也くん。」


真人はそう言って、竜磨くんが眠りにつくのを見守った。


一方その頃、竜磨くんの曾祖父にあたる隆夏(たかなつ)と真人は、別室で静かに晩酌を楽しんでいた。二人の間には、長年の付き合いならではの、落ち着いた空気が流れている。真人は、グラスを傾けながら、ふと思い出したように口を開いた。


「なぁ、隆夏。お前、確か70年前にタイムブラック現象で失踪したよな?」


真人の問いかけに、隆夏は特に驚く様子もなく、「ああ、したな。70年前のことだ。」と、あっさりと答えた。


すると真人は、少しばかり探るような視線を隆夏に向けながら、畳み掛けるように言った。「そのタイムブラック現象から、1年後に無事見つかったわけだが、お前、俺が刷野星(さやのほし)に関する本を初めて刊行した時に、偶然お前を見かけたんだ。あの時、お前は一体何歳になっていたんだ?本当のことを答えろ!」


真剣な真人の問いかけに、隆夏の表情がわずかに変わった。彼の耳は、みるみるうちに獣のような耳に変形し、口元からは鋭い犬歯が覗いた。そして、体つきも、先ほどまでの中年の男性から、まるで20歳くらいの若者のような精悍な姿へと変化した。若返った隆夏は、どこか懐かしむような表情で答えた。


「あぁ、そうだな……正直に言うと、あの時、俺はもう356歳だった、ということになるな。まぁ、この姿になっても、性格はあんまり変わってないから、そこは安心してくれ。」


隆夏の驚くべき告白に、真人は目を丸くして、「はっ?ということは、お前が普通の年齢のままだったら、とっくに死んでいたということか?」と、信じられないといった様子で問い返した。


隆夏は肩をすくめて、「まぁ、運が悪ければそうだろうな。俺は、たまたま、とある星に転移されて、そこで出会った獣と仲良くなっただけだ。まぁ、育ててくれたその獣は、もう死んでしまったがな。しかし、まぁ、このタイムブラック現象ってやつは、半世紀に一度か二度くらいは起こる珍しい現象らしいからな。」と、どこか他人事のように語った。


真人は、腑に落ちないといった表情で、「なぁ、隆夏。今世紀に入ってから、まだそのタイムブラック現象って起こってないよな?」と、念を押すように尋ねた。


真人の言葉に、隆夏は少し考えて、「あぁ、まだその現象は、一度も起こっていないはずだ。」と答えた。


それを聞いた真人は、明らかに驚いた様子で、「そうだよな!もし起こったら大変だ。お前からも、周りの者にその事故には十分気を付けるように言ってやってくれよ?」と、隆夏に頼んだ。


隆夏は、真剣な真人の言葉に、「ああ、わかった。」と頷いた。二人の間には、不思議な緊張感が漂っていた。


そして、夜が明け、新しい朝がやってきた。竜磨くんをはじめとする神羅家の一行は、眠い目をこすりながら、階下へと降りていった。広間には、昨夜とは打って変わって、卓いっぱいに美しく、そして美味しそうな料理が所狭しと並べられていた。その豪華な朝食を見た竜磨くんは、目をキラキラと輝かせ、真人のところへ駆け寄って尋ねた。


「これ、全部朝ごはん?すごい!」


真人は、竜磨くんの無邪気な驚きぶりに、にこにことしながら、「そうだよ~!遠慮しないで、好きなだけ食べなさい。」と、優しく声をかけた。すると竜磨くんは、嬉しそうにペコっと頭を下げて、用意された椅子に座った。


その頃、竜磨くんの曾祖父である隆夏は、昨夜の晩酌が響いたのか、少し眠そうな表情を浮かべながら、ゆっくりと階下へ降りてきた。それを見た竜磨くんは、いつもの明るい笑顔で、「ひいおじいちゃん、おはよう!」と声をかけた。


隆夏は、優しい眼差しで竜磨くんを見つめ、「ああ、おはよう、竜也。」と、穏やかに返した。そして、皆が食卓を囲み、「いただきます!」と元気よく挨拶をして、勇神星での招集会の二日目が始まった。

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少年失踪事件 よっぴぃ @yoshi10

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