『ユアラビ』

@hodhkhcgdiyeojdots

第1話

私は橘美玲。麗徳大学理工学部の2年生。大学も夏休みに入ったが最近の夏は暑すぎて、どこかへ出かける気にもならない。

今日のお昼はどうしようかなと考えていると、真希からDMが来た。

「 今から家行く、」

私は真希らしいなと思いながら、返事をするのがめんどくさくてリアクションで返した。


思ったよりも早く真希が家に来た。真希とは、高校生のときにチャーミーキャットというキャラクターが好きだったことで仲良くなった。


「家にお昼になるもの何も無いよ」

真希に言うと、真希はマジかよという顔をしたが思いついたようにスマホを取り出すと、とあるアプリを開いた。


『ユアラビ』

「このアプリっていろいろなものが頼めてすごい便利だよ、アイコンもチャーミーキャットとコラボしてるの、あと配達無駄に早いし」

「でも、怪しくない?私聞いたことないよ、そのアプリ」

「大丈夫!私何回も頼んだことあるし、」


不安が残りつつも、真希のスマホを眺めた。

アプリ内はほんとうになんでもある。しかも、送料無料。私もこのアプリを入れてみたい。


ピザとポテトを注文することにした。注文確定ボタンを押した途端、家のインターホンがなった。


その夜真希に教えてもらったリンクから、アプリに入る。さっき見たように、いろいろなものが売っている。すごい。しばらくして、アイスが食べたくなってきた。すると、ピロンと着信音が鳴る。何かと思ったら、『 ユアラビ』がオススメ欄にアイスを追加したのだ。


次の日もボールペンを忘れてしまって落ち込んでいると、オススメ欄に私がいつも使っているボールペンが追加されていた。私は最初は不気味に思っていたが、そんなことを忘れてしまうほどアプリにのめり込んでいった。


それからというもの『ユアラビ』でほとんどの買い物を済ませるようになった。ハンカチを忘れた時には、ハンカチを、日傘を忘れた時には日傘をとにかくなんでもどこでも直ぐに届けてくれる。私が生活していくのに必要不可欠なアプリとなった。


それから、1ヶ月後のこと、オススメ欄に新たなものが追加された。それは、変身グッズというものだった。自分の好きな動物になれるらしい。動物か、ならやっぱり楽そうな猫かなと思って買ってみる。相変わらずすぐに届いたダンボールを開けると中にカプセル状の薬が入っている。中には沢山の書類も入っていたが、1番上の使い方、飲み方という書類を手に取り、飲んでみることにした。使い方は簡単で、カプセルを飲んだあと、なりたい動物の名前を3回唱えればいいのだと言う。猫猫猫、3回唱えると急に眠くなって、


気づくと、私はどこか知らない場所にいた。

見たこともない野原、知らない場所に戸惑ってどうしようかとスマホを取り出そうとしたが、そのとき思い出した。わたしは猫になったのだった。


猫の暮らし方も分からなければ、他の猫との話し方も分からない。そして、気づけば猫としての私は息絶えた。


───以上が私の研究結果になります。

本日はありがとうございました。


「ネコの生きざまについてもっと教えとくべきだったなあ」講演を終えた1人の女はネコの亡骸を見ながらそういった。


とある大学の講堂で行われたプレゼンテーション。

スライドの表紙にはこう書かれていた。

近年の動物絶滅増加への対応~人間希少動物化へ向けて~

祀雅 真希

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