第1話

『3+1 side online へようこそ。基本的な設定を行います。』


 視界が暗転してすぐに空色の空間に来たかと思うとそう聞こえてきた。


「なるほど...、具体的には?」


『あなたの操作するキャラクターの設定とスタート地点、それと初期装備についてです。まずはキャラクターに関する設定から行っていきます。どの獣人にしますか?』


 与えられた選択肢には、猫系統(ねこ、チーター、ライオン)、犬系統(いぬ、オオカミ、キツネ)、その他の哺乳類(ウサギ、馬、熊、鹿)、トカゲ、ヘビ、

魚系統、昆虫系統。鳥系統がない。


「鳥系統は?」


『鳥系統は初期設定では選択できません。』


「じゃあ、ねこで。」


『かしこまりました。続いて、自由にアバターを作成してください。』


それまで何もなかった空間に人と猫の形をしたアバターが出現した。人の形をしたアバターは普段の自分の姿がデフォルトのようで自分とそっくりのアバターが浮かんでいた。髪の色を黒でセミロング、目の色を水色、身長を150cmくらいに変更して、猫のアバターは黒猫にした。2つのアバターの少し後ろの方に正四面体の何かが浮かんでいるのが見えた。おそらくそれが初期設定用のガイドなのだろう。少しの間、それを眺めていると、


『遠くを眺めていますが、何かありました?』


と、いきなり聞いてきたので少し飛び上がりそうになったが、それを感じられないよう、落ち着いた声で続けた。


「宙に浮いている正四面体は何かなと思って気になっただけ.......、アバターの調整はできたよ。」


『そういうことでしたか......、かしこまりました。次にスキルを3つ選んでください。』


 鳥系統を選択できない状況で空に行くことを考えると魔法で足場を作成し登っていくしかない。そこで選んだスキルは


【氷魔法】…氷魔法が使える


【固定】  …生き物、モンスターを除く基本的にすべての物体を任意の場所(空中、水中でも可                                                                            能)で固定させることができる。スキルを発動中は対象の物体を動かすことができない。一度このスキルを使って固定させた後、再び同じものに対してスキルを使う場合は、固定していた時間の2倍の時間を待つ必要がある


【浮遊】  …自分以外の生き物、モンスターを除くすべての物体(自分を含む)を空中に浮かせることができる。スキルの発動中に外部から強い力を加えることで動かすことができる。一度このスキルを使って固定させた後、同じものに対してスキルを使う場合は、浮遊させていた時間の1.5倍の時間を待つ必要がある。


この3つ。


「【氷魔法】、【固定】、【浮遊】の3つで。」


『かしこまりました。もう1つスキルをプレゼントするのでどちらか選んでください。』


【獣化】…スキルを発動すると動物の姿に変身できるが、基本的に人の姿となる。

再び使用するには変身した時間の1.5倍の時間を待つ必要がある。


【人化】…スキルを発動すると人の姿に変身できるが、基本的に動物の姿となる。再び使用するには変身した時間の1.5倍の時間を待つ必要がある。


「人化で。」


『かしこまりました。名前はどうされますか?こちらから選択肢を提示できますが。』


「 ヒメル で。」


『わかりました。続いて、スタート地点を決められますが希望される条件はありますか?』


そんなものすぐに空へと移動できそうなところ以外はありえない。それと空で生活したいけど、ほかのプレイヤーの視線を気にしていたくない。


「人?の住んでいる街とか都市から離れていて標高の高いところ。」


『かしこまりました。高難易度の環境となりますが、大丈夫でしょうか?』


「大丈夫、問題ないよ。」


『では、最後に初期装備についてです。所持金が10,000Gありますが、この中に購入したいものがありますか?デフォルトで所持している装備を売ることで所持金を増やすことでより高いものも購入できます。』


他のプレイヤーとあまり関わる気のない私にとってお金はたいして重要度は高くない。高難易度の環境でプレイして死んだらなくなってしまうようなら所持している意味は全くない。手元に出てきたカタログをみて極力使いきれそうなものを探す。カタログに書かれている商品の中には剣、弓などの武器や兜、胸当てなどの防具、そして指輪などのアクセサリー、一部のスキルが載っていた。4,000Gで【 MP 増加 I 】と【アクセサリー作成】がそれぞれあった。


「【 MP 増加 I 】と【アクセサリー作成】で。あと初期装備の防具を全部売って黒の外套を一つ。」


『わかりました。ではステータスを確認して問題がなければ教えてください。』



ステータス

名前 :ヒメル

種族 :獣人(猫)

レベル:1


HP :10

MP :20(+10)

SP :100

STM :100

ATK :12 (+2)

DEF :10

AGI:12 (+2)

TEC:10

LUK:10


スキル:【氷魔法】、【 MP 増加 I】、【アクセサリー作成】、【固定】、【浮遊】、【人化】


種族特性:【暗視】、【跳躍力上昇】、【消音】、【ATK増加II】、【AGI増加II】



種族特性は獣人の元となる動物の性質の一部が反映される。モチーフが肉食動物であれば、ATKとAGIが多少増加し、草食動物であれば、AGIとSTMが多少増加するらしい。自分のステータスに問題点はなかった。


「問題ないよ。」


『では、良きゲームライフを!......の前に一つ渡すものがありました。これは他者から略奪されたり、死んでも失うことはないので安心してください。』


そう言って渡されたのは、金属製で正四面体の飾りのついたチョーカー。飾りの形は宙に浮いているそれと完全に一致している。


『それでは、今度こそ良きゲームライフを!』


そしてすぐに空色の空間から周囲の景色が変化していった————

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3+1 side online ~蒼目の猫は空での生活を夢に見る~ ガルグイオ @panda_brown_

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