第2話 ひいじいさんの約束と文学メガネ少女

 俺は、授業終わりに図書室に来ていた。

 ここだけが、俺にとっては憩いの場所で落ち着けるところがここしかないので。

 本を読みながら、図書室のカウンターの方を見てみるとそこに、上のフレームがない平行四辺形のメガネをかけた、おさげの幼げな女の子が椅子に座りながら俺のことを見ている。



 ずっと睨み付けてきて、気分がいいものじゃないのでとりあえず場の空気を変えようと話し掛けてみた。


「何かな? 俺に、何かようかな?」


「別にようは大してないです」


 メガネの女の子は、トントンと音をたてながら本を整理していく。

 黙々と作業していたが、俺にはどこか怒りを感じずには入られない。


「強いていうなら……私は、高井くんと同じクラスの同級生ですよ……後輩ではないです」


「そうなのね~いやいやいやいや! 別に、子供っぽいとか君に思ってないから!」


「それと……私の名前は大宮知恵おおみやちえです……高井くんの後ろの席です」


 俺は、彼女の存在に全然今まで気付かなかった、要ることさえ意識しておらず。

 何か、女の子が後ろに居たことしか覚えていなかったので、まさかこんな二重の可愛らしい子が居たなんて。

 大宮は、呆れて頭を右手で抱えながらため息をしていたものの、慣れていたことなのか普通に話し出す。


「そうですよね……私は、地味なので大抵誰もがそうなので慣れました」


「いやいやいやいや! 別に可愛いしそんなに地味じゃないよ!」


「お世辞はいいです……それに、美人なロシアの彼女さんも居るじゃないですか……」


「アイツは彼女じゃない! ただの、厄介な幼馴染みだ!」


 突然、窓ガラスが割れたと思ったらクリスが飛びし出してきた、俺はついビックリして声を上げてしまった。


「おい! 何をやってんだお前は!!」


「レンマ! コレヲミロ! コンヤの! ユウショクダ!」


 クリスは、右手でニワトリの首を掴み逃げ出そうと必死に羽ばたき抵抗していた、本当に可哀想なので止めてあげてほしい。


「コラ! アバレルナ! オマエハ、ワタシノディナー二ナルウンメイダ! アキラメロ! 」


「コケーー!!」


「おい! 止めてやれ……う~ん?」


 クラスが、掴んでいるニワトリに紐がかかっていてそこに繋がってる名札を凝視すると、コッコさんと書いてあった。


「それ……校長の、大事なペットのニワトリのコッコさんじゃないか!」


「ソウナノカ? ソトニイタノデ、マチガエテシマッタ」


「今すぐ、校長に返してこい!!」


 クラスは、残念そうに落ち込みうつ向くが俺はそんな姿をしていても、断固怒り続けた。

 大宮は、俺とクリスの状況を見ながら引き笑いをして引いていたと思う。


「それに、どうやってここまで来たんだよ! ここ、3階だぞ!」


「ソレハ、ロープヲツカッテノボッテキタ二キマッテルダロ!」


 クリスが割った、窓の方のベランダの手すりにロープが結ばれていた。

 どうやら、クリスはこれを使ってよじ登ってきたようだ、どんだけ軍人気質なんだよ。

 確かに、ロープ訓練はやるが普段の生活でここまでする必要ないだろ。

 しかも、俺に取ってきた獲物コッコさんを見せ付けるために。

 お前は、ネズミをとってきて自慢する飼い猫かよと。

 

「コラァぁぁぁ!! ワシの、亡き妻からプレゼントされた大事な家族のコッコさんを返せ!!」


 クリスは、校長の罵声を聞いて急いで走って逃げて行った。

 その間も、校長は「ロシアの小娘、今度こそ許さん!」と言いながら愛用のゴルフクラブ持ち振り回しクリスは「コウチョウ、マサカキサマハエリートクンレンヘイカ!?」といい逃げ回っておい駆けっこをしていた。



 俺と大宮は、お互いその光景を目の当たりにして呆然と見ているしかなかった。


「よく、あの人と要られますね……」


「あはは……まあ、一応幼馴染みだし……それに、ひいじいさんと約束したんだ……子供の時に……絶対に、どんなことが起きても守ってやるって」


「どういうことです?」


 大宮の質問に俺は答え、クリスとの出会いとそれまで起こった出来事を事細かく話す。

 ひいじいさんの、尊敬出来るパワフルな生きざまや各国の戦争や、それにより貧しい人々の生活などを。


「俺にとって、あの人は本当に凄いと思う。色んな国を渡り歩き様々な戦争などをどうにか納めて、貧困な人がいる国に行き、物資を届け生活設備を整えて国を救ってきた英雄だ! 俺も、サバイバル生活を余儀なくされた時ヘリを呼んで助けて貰ったしな」


「そうなんですか……私も、そう言う人が要ればな……」


「何だ? 何かあったのか?」


「……」


 大宮は、暫く黙り込み明日の放課後に話すのでまた図書室に来てくださいとだけ言い、それ以降は今日は何も発しなかった。



 俺はクリスと再び、授業が終わった後大宮が待っている図書室へ行き、ドアを開けると珍しくメガネの幼げな美少女の、大宮知恵が窓の外にある雲を眺めて立っていた。


「来てくれたんですね……じゃあ、話しますね」


 俺は、唾をのみ込み一気に緊張感が走る。

 クリスは、というと相も変わらず不思議そうに腕を組み、何も分かってない様子。


「私は……この時間しか、自由がないんです……毎日、母親にはテストが悪ければ怒鳴られ、家庭教師は私の勉強を見てくれてはいますが……毎日、ニヤニヤしながら嬉しそうに興奮しながらはぁはぁ息を激しくしている……多分、ロリコンなんでしょう」


 俺は、母親よりロリコン家庭教師の方が気になった、というか何でそんな性犯罪者クビにならないんだ。

 普通は、問題になってクビだよそこら辺が狂ってる。

 本当に、解決しなきゃいけない課題だと思い俺は決心する。


「よし分かった! 俺が、ソイツらどうにかしてやる!」


「え?」


 大宮は、今までにそんなことを言われると思わないかのように、キョトンとした顔で口を開けながら何か、意味不明なことを俺が言ったかのような表情をしていた。



 翌日が経ち、いよいよ大宮の家へと乗り込む時がきた、意外にも綺麗で外観は何処かのお嬢様でも住んでるような、豪華な形の場所でとてもじゃないがそのようなことが起きるとは思えなかった。

 だけど、俺は知っている。

 これは、見せ掛けだけの作り物で中身が伴っていたないと。



 暫くたち、大宮の部屋へ入ると案の定大宮の母親が帰ってきた叱れていた、勝手に上げたことが良くなかったみたいだ。

 俺にとっては、どうでもいいので大宮の母親に今回の経緯全てを包み隠さず話した。


「大宮のお母さん! 聞いて下さい。確かに、俺が家へ許可なく入ってきたことは良くないですが……しかし! あなたは、娘さんをそれだけ追い込んでるんですよ!」


「まあ!! 失礼ですね! 私は、知恵のことを思って勉強をさせてるんですよ! それをあなたに邪魔される言われはありません! それに、最近娘はゲームを買ってきてやっていたり、アニメを見てあまり勉強をしなくなりました。ですから、厳しく教育してるんですよ」


 大宮のお母さんは、メガネをクイクイ上げながらまるで自分は非がないように淡々と話し始める。

 大宮のお母さんは、頑固で俺と大宮の言ってることを理解せずに己の言いたいことをいう毒親なのだ。


「大宮……お前が、ゲームやってるのは本当なのか?」


「うん……私ね、ゲームとかアニメが好きなの……だけど、お母さんに止められてどうにかなりそうだった」


「まあ!! あんな、低俗な物必要ないのにあなたって人は。もっと、厳しくする必要がありますね」


 大宮のお母さんに、俺は猛烈に苛立ちを感じずには要られなかった。

 何で、娘のことを分かってやろうとしないんだよと、絶対にうちの親ではこんなことあり得ないから、俺はそういうことは分からないかもしれない、だけど人として間違ってることだけは間違いない。


「ふざけるなあああ!!」


 俺の怒号が、家中に鳴り響く。


「何で分かってやれないんだよ! 何で! 娘の大事なものを……奪うんだよ! それに、大宮がなりたいものはアニメやゲーム関係の仕事だろ?」


「うん……そうだけど」


「だったら、曲げちゃダメだ! 親に何を言われようが他人にどう言われようがそれだけは……ダメなんだよ!!」


 俺は、涙を流し力説する。

 大宮のお母さんは、想定していなかったのか茫然と立ち尽くすしかない。


「それにだ……あんなのところの家庭教師も

、調べさせて貰った! アイツは、とんでもない変態野郎で何回か生徒と、性的な問題を起こしては塾とかをクビにされていた! これが、証拠だ!」


 俺は、部屋のサッシを開けてベランダで待っていたクリスが飛びしてきた。

 両手で、パソコンを持っていて画面にボイス再生ボタンがあったので押すと、スピーカーからロリコン家庭教師の性的なことを、生徒に指示しているかのような言葉の数々が聞こえてきた。



 大宮のお母さんは、愕然として跪き今までの自分の行いを悔い改めいる。


「私は……間違っていたわ……ごめんなさい! 知恵!」


「うう~ん……分かって貰えればいいの」


「これからは……あなたの、好きにしない……私は、親としてダメだったから」


 大宮のお母さんは、うつむきまるでゾンビのように正気を失いノロノロと部屋から出ていった。


「これで……良かったのか……大宮」


「ありがとう! 私ね……1人じゃ……なにも言えなかった……本当に、感謝してもしてきれない」


 大宮のお母さんは、それからもう何も大宮のことに関して言ってこなくなった。

 俺は、大宮にお母さんが落ち込んでいてかなしくないかと聞いてみたが、全然そんな素振りはなく前より楽しそうに笑顔で楽しそうに見えた。



 俺は、困ったことに大宮に好きだと翌日告白された、何か私を救ってくれた王子様みたいでかっこ良かったとか何か言って。


「私は、絶対に! 高井くんを、惚れさせて付き合ってもらいます!」


「はあ!? 何で、そんな話になってんだよ!」


 大宮は、それからも学校で俺を見付けるやいなや腕をくんできたり、しつこく付きまとってくる。


「あの~……いい加減に止めてもらえない?」


「絶対に嫌です! 私の彼氏に、ならない限り離しませんから!」


 大宮も、母親譲りの頑固者で融通が効かないってところがあるようで、俺はまた苦労が増えると思うと憂鬱だ。


「オイ! ワタシノ、レンマカラハナレロ!」


「あなたには、関係ないですよね! だったら、クリスさんこそどっかいけばいいんじゃないですか!!」


「カンケイナクナイ! ワタシノ、ダイジナヒトダカラナ! レンマハ!」


「何ですって!?」


 俺は、大宮とクリスに一斉に睨み付けられてあらぬ誤解を受ける。

 俺って、何でこんなにもろくでもないことに巻き込まれるのだろうと、考えるとやはりクリスと関わると苦労するんだろうと思いこれから起きる、出来事を想像するだけで疲弊してしまう。

 

 

 


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元ロシア軍人に勤めていた幼馴染みの同年代の女子が問題ごとを起こすのでとても辛い 黒金 影輝 @voltage

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