第7話
「おい、くるぞ!やるしかない」
エリエルは剣を正面に構えた。
「エリエルくん、まともに戦うのは危険です。対策を考えるので少し時間を稼いでくれませんか?」
「ん?あぁわかった。別に倒しちゃってもいいんだろ?任せろ」
エリエルはヴァル・ドーレンに向かっていく。
(なぜ魔法がまったく通じないのか。魔力で抵抗している感じでもなかった。そもそも魔力が使えないと言っていた。どういうことなのか)
「やあーっ」
エリエルとヴァル・ドーレンは剣を交える。
「ほお、まだまだだが悪くはないな」
ヴァル・ドーレンは稽古でもつけるようにエリエルの剣を捌いていく。
「なんでよ、めっちゃ余裕じゃねーかよ」
エリエルは全力で打ち込んでいるせいか息が上がってくる。
「太刀筋があの男にどこか似ている気が'…お前剣はどこで習った?」
「あの男?誰だよ。剣は親父に習った」
間合いを取り息を整える。
「なに、唯一剣で私を負かした男だ。ふむ、父親か…(まさかとは思うがな)父親の名は?」
「俺が二人目になってやるよ!なんだよ俺じゃなくて親父かよ!親父はラスタード」
「!!!ラスタードだと!?ラスタード・フリールトか!」
「?あぁそうだけど」
「あっはっはっ、そうか!お前はラスタードの息子か!確かに似ているな」
「なんだよ、親父を知ってるのか?」
「私を負かした男がラスタードなのだよ」
「!!!親父が!?」
「宿敵の息子というわけだ、どうしたものやらな」
ヴァル・ドーレンは目を細めてエリエルを睨みながら剣を構える。その口元には笑みがこぼれていた。
(理由はわからないが魔法が通じないとなるとエリエルくんに強化魔法を…いや、それでもあの男には剣の腕で敵うまい。隙を見て男の動きを止める程度しかできないか)
ラクティアは剣を交える二人を見つめ杖を構える。
「くっそぉ強いな、守りだけで精一杯だ」
エリエルは再び上がった息を整えながら汗を拭って剣を構えた瞬間だった。
「戦闘中に隙を見せすぎだぞ」
ヴァル・ドーレンが一瞬で飛び込んできて剣を横に払う。
「なっ!?」
エリエルは咄嗟に剣の腹で受けたものの吹き飛ばされる。
「痛てて」
壁をぶち破り隣の小部屋に入り込んでいた。
「なんだここは、扉がない?隠し部屋なのか?」
小部屋を見渡すと台座がありその上にあるガラスケースの中には剣が収められていた。
「この剣、強い力を感じる。貰っていいかな」
ガラスケースを開け剣を手に取ると飛ばされた時にできた穴へと戻る。
「さて、魔法も通じない、剣の腕が立つ剣士もいないお前たちでは私に勝てない。そろそろいいだろう?」
ヴァル・ドーレンは剣の先をラクティアに向ける。
「吹きし風よ荒れ狂え」
ラクティアは杖を向けるとヴァル・ドーレンに激しい竜巻が襲う。
「ふん、無駄なことを。その程度の魔法では私に効かん」
竜巻などお構いなしに進んでくるとラクティアに剣を振り上げる。
「あぁ、ラクティア!!」
ミフィナが声を上げる。
「お前の相手は俺だろうがよ!」
ヴァル・ドーレンの後ろ側からエリエルが飛び上がって剣を振りかざす。
ヴァル・ドーレンは振り向き軽く弾き返す。
エリエルは着地と同時に突っ込み剣撃を続けざまに浴びせていく。
「動きがよくなってるな、その剣のおかげか?しかしまだ足りんな」
激しい剣撃を捌ききると力を込め一閃する。
エリエルは咄嗟に反応して剣で受けたものの吹き飛ばされ柱に激突する
「うっ、くはっ」
かろうじて立っているものの身体を強く打ちつけ動けなくなる
「終わりにしてやろう」
ヴァル・ドーレンはエリエルに剣を突き付け静かに言った。
初めての圧倒的な力の差を感じ自分の敗北を認めざるを得なくなったエリエルは座り込んでしまう。
「やめてぇーー!」
ミフィナの叫びとともに光とともに力が溢れてくるのを感じる。
「え、なに?これは・・・私に魔力が流れてきてる?」
「どこから?いえ、今は考えてる暇はないわ!これだけの魔力があれば今なら」
手に持っていた本を開き書いてある言葉をはっきりと高々と読み上げる。
「空間の彼方へ誘わん」
エリエルに剣を振り降ろそうとしていたヴァル・ドーレンに杖を向けるとまばゆい光に包まれる
「な、これはいった・・・」
ヴァル・ドーレンが言い終わる前に光とともに姿が消えていった。
エリエルは消えたヴァル・ドーレンがいた空間を呆然と眺めたまま固まっていた。
「上手く・・・いった?助かったのかしら?」
力が抜けたようにその場に座り込むと向こう側に同じように座り込んでいるまだ知り合ったばかりのエリエルを見る。その瞳には涙が溢れていた。
レストリア戦記~交錯する剣と魔法~ @kumane
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