第6話

部屋に入ると炎が灯っているろうそくが目に入り淡い明かりで窓があることがわかる。地中のせいか窓からの光はなく薄暗くまだ奥があるようだが先は暗闇が広がっていて確認することができない。

「うっわぁ暗いなぁ、なんとかなら・・・」

エリエルが言いかけたところでラクティアの腕が前に伸ばされてきて遮られた。

ラクティアは声を静めてエリエルに返す。

「静かに。気配を感じます」

「魔力を帯びしものよ明かり灯せ」

杖を掲げると部屋の壁際に燭台があったらしく炎が灯される。等間隔に置かれてある燭台に炎が奥に向かって順番に広がって部屋に明るさを与えた。

三人は奥に進むとふと立ち止まる。そこには立ちつくしている人がいた。マントを羽織っているうえ後ろ姿のためどんな人物かはわからない。ただ腰に剣を下げているので剣士であろうことだけは読み取れる。

「なぁ、あんたそこで何してんだ?」

エリエルは相手に聞こえるように大きめの声で問いかけた。

「エリエル遠慮なさすぎ」

ミフィナが呆れる。

「同感ですが、少し気になりますね」

(なぜここに人がいるのか。いつからいる?どうやって入ってきた?)

ラクティアは思案しながら杖を持つ手に力を込める。

立っている者はエリエルの声が聞こえたのかゆっくり振り返る。それは男であった。上半身にしっかりとした騎士を思わせる鎧をつけてはいるが他は軽装で、腰に下げている剣は長剣で盾は持ってなさそうである。

(騎士くずれか?)

ラクティアは相手に悟られぬよう気を使いながら観察する。

「お前たちは・・・何者だ?」

男は静かに話す。

「私たちはエスペリール王国からこの遺跡の調査にきているものです。あなたは?」

ミフィナは相手を刺激しないように礼儀正しく答える。

「エスペリール王国?ブルグがいるところか。なるほどそれで遺跡調査か」

「父ブルグをご存知なんですか?」

「父?お前はブルグの娘か。なるそど、それはおもしろい」

男はミフィナたちはお構いなしで自分が理解するためだけに話しているのか話がいまいち進まない。

「あなたはどこのどなたなんです?王国が遺跡調査することに何か問題でもおありですか?」

ラクティアはたまらず疑問に思っていることを矢継ぎ早に言った。

「まったく何も知らんと見える。まぁいいだろう。私はヴァル・ドーレン、フェルファルド様に仕えるものだ。」

「ヴァル・ドーレン・・・フェルファルド・・・どこかで」

ラクティアは考え込む。

「ブルグたちは遺跡調査をしているのではない。遺跡の監視をしているのだよ。」

「監視?なんのためにかしら?父はこの遺跡をすでに知っているということ?」

「そうだ。ここには我が主フェルファルド様の力が封印されているのでな」

「え、どういうこと?頭が追い付かないわ」

「なぁどういうことなんだよ。親父を知っているのはなんとなくわかったけど他はさっぱりなんだけど」

ミフィナもエリエルも急な話に思考が停止状態になる。

「!!!フェルファルド!」

ラクティアは突然声を荒げて言った。

「どうしたの?急に」

ミフィナは不思議な顔でラクティアを見る。

「いえ、フェルファルド、どこかで聞いたことがあると思っていたのですが思い出しました。確かかつて圧倒的な魔力から大魔道士と呼ばれ世界を手に入れんと画策していたが討伐パーティーに討たれ阻止されたとか」

「フェルファルド様は討たれたのではない。倒すことが不可能と感じたやつらが封印したのだ。私の力が至らなかったばかりに」

「それでこの遺跡の封印をあなたは解きにきたと?」

ラクティアはまだまだ疑問に思うことたくさんあるものの今考えうる事態を想定し杖に魔力を込め始める。

「そうなのだがな、封印を解くには魔力が必要なようなのだが私は魔力が出せなくてな、困っていたところをお前たちが来たということだ。封印を解いてもらえると助かるのだが?あまり力ずくや脅しは好きではないのだがな」

「おいおい、さっきから聞いていればなんなんだよお前は!全然わかんないけどなんか気に食わねぇ!」

「小僧に用はない。ブルグの娘はどうだ?それともそっちの魔術師のほうが魔力は高いのかな?」

「なんだとぉーこらー」

エリエルは暴れんばかりに声を荒げる。

「な、何を言って・・・」

ミフィナはヴァル・ドーレンの不気味な迫力に押されていた。

「炎よ爆ぜろ!」

ラクティアは杖の先をヴァル・ドーレンに向け魔力を開放する。

飛んでいった炎はヴァル・ドーレンのところで爆発する。

「うわっ」 「きゃーっ」

「ふたりともここは退きますよ」

ラクティアはふたりに近付く。

「不意打ち直撃だっただろ?いらねぇかもだけどトドメさすとか捕まえるとかのほうがよくないか?」

エリエルは長剣手にしてを構える。

「可能かもしれませんがそれを試している時間はありません」

ラクティアは脱出すべく辺りを見渡す。

「不意打ちでなかなかの魔法だがあらかじめ魔力を込めていたか。話も時間稼ぎだったというわけだ」

ヴァル・ドーレンは平然として砂埃から出てくる。

「な、無傷?そんなバカな!」

ラクティアは驚きを隠しきれず思わず口にした。

「少し痛い目に遭ってもらうしかないか」

ヴァル・ドーレンは腰に下げている鞘から剣を抜き構える。

「ではいくぞ」

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