第四話:1565年(永禄8年) 将 軍 殺 害

京の町で暮らす様になり早数年。

京での生活にも慣れてきた頃、俺はとある噂を耳にした。

それは、時の将軍足利義輝と、畿内で大きな勢力を持つ三好氏の不仲、それによる対立である。

とは言っても俺とは住む世界の違う人間たちの争いと思い、気にすることはなかった。


しかし、事件はおこる。

永禄8年5月、三好義継は、約1万の軍を引き連れて上洛。この時は、三好軍がよもやあの様なことを起こそうとは誰も考えなかった為に、警戒は薄くなっていた。

その翌日、三好軍は突如、二条御所へと侵入、その日のうちに将軍足利義輝は討たれた。

午後11時ごろのことであった。

将軍殺害後、三好軍は二条御所を火にかけ、完成間近であった二条御所は、一夜にして、焼け野原となってしまう。


「足利将軍家の栄華も、応仁の乱以降衰退。先の将軍義輝も、権威の回復を狙ったが、それが大名家の逆鱗に触れ殺害。いよいよ幕府も、終わりが近づいたきた……か」


そう呟いた俺は、次の町へと移動しようとする。その決断は、この先の俺の人生に大きな影響を及ぼすことになるが、それはまだ先の話。


      人の世の 無常と思う 夏風の

         悲しき音に 心荒らされ

(訳:人の生というものはとても儚いものである。今、我が心は夏に吹く風の悲しげな音に儚さを重ね、大きく乱されているのだ。)





第壱章:混乱 完

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目が覚めれば、桶狭間 8225zzz @82250825

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