夏を繋ぎ合わせた走馬灯

やわらかな文体で書かれていますが攻めた作品です。

母である夏希が24歳にして娘の真希を産み、真希が24歳でプロポーズを受けるまでの、短編でありながら二十数年にわたる長大な物語。丁寧に書き込まれていて、小説を読んでいるというより、思い出を回想しているような気分になります。

特筆すべきは、出産、夫との出会い、自らの死、殆どが向日葵の季節に集中しており、現れる思い出がことごとく夏景色しかないことです。偶然であろう人生ですが、ありえなくもない、でも定められているような、なんとも言えぬ「幻想的」な気分にさせます。
物語中盤を過ぎ、早逝した夏希は猫となり、夫の明、思春期の真希を、母として接することができない無念さを隠しながら献身的に見守るようになります。

個人的に一番刺さったところは、

未熟児で「生きてるだけで偉い」と言われた夏希が明と出会い真希を授かって泣くところ。物語全体においてほんの短い部分ですが、ここは読んでいて本当に胸に詰まるものがありました。夏希良かったね!!
現代ドラマの作家さんだけあって、ここは十八番なのだろうと思いました。

あたたかく、切なく、移り変わっていく物語。
ありがとうございました!