後半
佐久間さん、尾崎さん、宇都美さん――以上三人の体験談を紹介した。
彼らは互いに面識がないものの、出身地は同じであり、中国地方にある小さな町だった。また、彼らそれぞれの体験談は、すべて同じ山で起きた出来事だ。
その山の中腹には
いつからそこに据えられている祠かは、記録がないために判然としないが、一見してずいぶん古いものだと察せられる。永く風雨にさらされたあとが、あちこちに見受けられるのだ。
その地方に残る民間伝承によれば、
この異形の
山の主である
上空から人を狩り取って、骨まで喰い尽くす――と古くから口伝されている。
今回体験談を紹介した三人は、それぞれが別の日に、山で同じような音を聞いた。
それは鳥が羽ばたくような音だった。
バサ……バサ……。
さらに彼らは巨大な鳥のようなモノを目撃している。
山には多くの野鳥が棲んでいるが、人ほどもある大きな鳥はいない。
あれは
もし、あれが本当に
しかし、尾崎さんは今でも山に足を運んで、変わらず川釣りを楽しんでいるという。そして、よく釣れた日はなるべく時間をつくって、釣った魚を何匹か
祠の前で手を合わせて、心中でこう唱えてもいる。
いつも川で魚を釣らせてもらってます。
ありがとうございます。
その行いと関係があるかどうかはわからないものの、ここ最近はいいことばかりが続いているという。
(了)
おん 烏目浩輔 @WATERES
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