ホルティの地図
ヨーゼフは臨時的に自分に権力を集中させ、半ば戦時内閣の様な体制とし様々な問題に対応していった。しかし反体制派も多く、続く暴動をプロパガンダや軍隊による制圧で必死に抑えても、根本的解決にはならないことを高官の誰もが知っていた。そこでヨーゼフは一週間程のオーストリア周辺の沿岸調査をホルティに命じた。ホルティ臨時測量編成艦隊は、オーストリアの南端へ向かった。しかし、帰ってきたのは2ヶ月後のことだった。出航に立ち会った誰もが彼の死を覚悟したが、彼は無傷で帰ってきた。そして彼は想定よりも遥かに詳細で広範囲な図を皇帝へ献上した。
ヨーゼフ「今回の探索は非常に骨の折れるものだっただろう。感謝する。」
ホルティ「いえ、それが違いまして…」
ヨーゼフ「何かあったのか?」
ホルティ「そもそも食料の量から見ても二週間は持たなかったでしょう…」
ヨーゼフ「海上で食料でも獲得したのか⁉︎」
ホルティ「まさか、私は隣国と交流したんですよ。その際に食料供給やら地図提供やら、様々なもてなしをしてもらってという形で…」
ヨーゼフ「南方の国家…オスマン帝国か?」
ホルティ「いいえ、全く違いました。彼等は自分の国のことをヨボドノギ…だとか言ってました。そして、これが彼等から貰った地図がこちらです。」
ヨーゼフは広げられた地図を見て驚嘆した。自分が知っていた国がことごとく描かれていないのだ。
ヨーゼフ「これは、本当にこの世界の地図か?」
ホルティ「彼等の話が全て真実であるならば、そうでしょう。」
ヨーゼフ「信じられない話だ。夢としか思えない。」
ホルティ「私もこれが夢だと都合が良いのですがね…」
ヨーゼフ「…ホルティ君、今日から20日の長期休暇を命ずる。長旅ご苦労であった。この期間を経て体力を回復してくれたまえ。」
ホルティ「ありがたいです、それでは。」
ホルティが退出したと同時に一気に不安感が湧いてきた。いくら遅れていたとはいえ栄光のある国の統治者であった彼にとって、異世界での死など到底受け入れ難いものだった。
ヨーゼフは現世に帰る一環として、地図を見ることにした。
オーストリア異世界記 @Aubrey1216
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