第20話 オジサマの魅力
「トモヤ様、ご紹介に預かりました。セバスチャンと申します。気軽にセバスとお呼びください」
俺は年老いた男性を紹介された。
どうやら過去に執事をやっていたが、歳老いたため執事を引退した人らしい。
いかにも執事をやっていましたという佇まいに見た目よりも年若く見える。
この人こそが執事の鏡っていうイメージだ。
名前がセバスチャンってのも好感がもてる。
セバスもどきのサバスとは全然違うからな。
あいつはただの変態忍者だ。
「こちらこそよろしくお願いします」
一礼するとセバスは微笑んでいた。
その優しい笑顔に俺も癒される。
この国の人は歳老いても顔面の良さは変わらない。
「彼はサバスの父親で、今はこの公爵家の財務関係を手伝ってもらっている」
まさかサバスの父親だとは思いもしなかった。
大体ウェンベルグ公爵家の執事をやっているらしい。
本当にサバスは変態忍者じゃなくて執事のようだ。
「今回当主様からトモヤ様に、騎士団への補填されているお金について資料と説明をして欲しいとのお話があり伺いました」
「あっ、資料を持ってきますので、少し待ってもらってもいいですか?」
俺は急いで部屋に戻って資料を持ち出す。
帰ってくるときに一度クリスチャンに確認したら、原本じゃなければ持ち出しても良いらしい。
部屋の扉を開けると、そこにはセバスが立っていた。
「えっ!?」
「荷物が多いかもしれないと思い先回りしました」
「あっ、ありがとうございます……」
あまりにも素早い動きにやはりサバスと親子なのを実感する。
「では資料をお持ちしますね」
まとめた紙束を持って公爵家の資料室に向かう。
「ここが資料室です」
中にはたくさんの本棚と大きなテーブルが一つ置いてあった。
「私は基本的にここで作業していますので、別の日も何かあればこの部屋に来てください」
「わかりました」
「とりあえず確認したいのはいつ頃のですか?」
優先順位をつけて、今年度の半年分を先に確認することにした。
「僕が計算したところだと4月から10月までのところでお願いします」
この世界も一年が12ヶ月と分けられている。
見た目の概念以外は、ほとんど元いた世界とさほど大きな変化はない。
「すぐにお持ちしますね。トモヤ様はそこの椅子に腰掛けてお待ちください」
椅子をテーブルの隣に持っていき、そこで待つことにした。
さすがセバスが使っているデスクで待つのは気が引けるからね。
部屋の中は騎士団とは異なり、ある程度まとめられている。
セバスの性格が出ているのだろう。
しばらく待っていると、セバスは沢山の資料を抱えて持ってきた。
この世界には簡易的にまとめる方法はないのだろうか。
「お待たせしました。これが騎士団へ補填している金銭についての資料になります」
資料に目を通すと綺麗にまとめてあった。
細かく分けて書いてあるため、紙の量が多いのだろう。
「セバスは公爵家に必要な存在ですね」
「恐縮です」
口ではそう言っているが、セバスは嬉しそうに目尻にシワを作り笑っていた。
枯れ専好きだとセバスみたいな人はたまらないだろう。
イケオジを超えた魅力はこういうところから感じる。
俺は自身の持ってきた資料を取り出して、セバスと内容を確認することにした。
「これはトモヤ様がまとめた物ですか?」
「こちらが騎士団員でまとめていた魔物討伐における資料です。それを簡易的に僕がまとめた資料になります」
俺が資料の説明をし、セバスはしばらく資料を眺めていた。
「これは――」
俺がまとめた資料を見るとすぐに気づいたのだろう。
「ちゃんと計算すると公爵家から補填しなくても騎士団は運用できているはずなんですよね……」
セバスはテーブルの下から何かを取り出した。
見た目的には電卓の形に近い。
「セバスさんそれはなんですか?」
「ああ、これは魔道計算機と言って、数字を入力していくと自動で計算できる魔道具です。我々みたいな職業には便利ですが、魔力の消費が激しいのが唯一の欠点ですね」
この世界の電卓は魔力で動くらしい。
たしかに騎士団が魔力をたくさん使う魔道具を使っていたら訓練もできないだろう。
すぐに騎士団の写しの資料を計算し始めた。
「たしかに計算がずれていますね」
「そうですよね」
俺は元々数字に強い方なので暗算と筆算で計算していたが、やはり電卓があると便利そうだ。
「この月は申請があり騎士団へのお金は30ゴールドをお渡ししています」
「実際はこの時は国からの補助金で足りているんですよね」
国からの討伐報酬や決められた税金から差し引くと、公爵家から補填する必要はない。
それに1ゴールド1万円相当だと街に行ったときに感じたため、大体日本円で30万円も渡したことになる。
俺とセバスが半年分の計算をすると、驚いた数字が出てきていた。
「500ゴールドですか……」
半年で500ゴールドのズレがあり、それだけ騎士団は多く補填されていたことになる。
これだけあれば騎士団自体や街にも還元できるだろうし、公爵家からの補填なく騎士団だけで運用できるだろう。
「セバスさんありがとうございます」
気になっていたことが解決していたため、明日の朝に一度クリスチャンに相談することにした。
「では、お部屋まで送りますね」
断ったがセバスが話したいという理由で、部屋まで資料を運んでもらった。
特に日常の会話しかしていないが、サラッと紳士的な行動をするため、魅力的に見える。
枯れ専でもないがそれでも魅力を感じるほどだ。
「遅くまでお付き合いしていただきありがとうございます。先に休みますね」
「おやすみなさい」
資料を受けとると部屋に戻る。
彼は扉を閉めるまでお辞儀をしていた。
「あの歳であそこまでの能力があるとは……」
セバスの掠れた声が聞こえた気がするが、止められなかった俺はそのまま部屋に入った。
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【あとがき】
「そんなところで何してるんだ?」
「あっ、なんかここに入っていることをすると★とレビューがもらえるんだって」
俺は突然空から振ってきた箱に手を入れる。
中にはいくつか紙が入っているようだ。
「えーっと、ロベルトに抱きつ――」
「これでいいのか?」
いきなりロベルトが俺に抱きついてきた。
紙にはロベルトに抱きつくと書いてあったはず。
俺は紙の書いてある通りにロベルトをギュッと抱きしめる。
「トトトトモヤ!?」
「んっ?」
見上げると顔を真っ赤にしていた。
頭上から★よりも♡が飛んできている気がする。
「★かレビューが欲しかったのにな……」
「お前ら、★とレビューだぞ! わかったな!」
ぜひ、二人に★とレビューをお願いします。
コメントに好きなカップリングや見たいシーンがあれば記載してください。
あとがきを使って書いていきますね笑
次の更新予定
2024年9月20日 18:03 毎日 07:03
美醜逆転した世界で俺は運命の相手を探す k-ing@二作品書籍化 @k-ing
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