箱に囚われている
@yukidaihuku
第1話:記憶
僕は誰かが僕を呼んでいる夢をみる。
でも誰が呼んでいるのかわからない。
だけどその声をきいているととても懐かしくてなぜか悲しくなる夢。
目が覚めると僕は1人だった。
知らない天井、知らない部屋、外はカーテンが閉められていて見えないけど、時計は朝の7時をさしている。
あれ 、ここどこなんだろう?なんでこんなところにいるのかわからない。
何も、わからない。
どうしてここにいるのかを考えていると扉の奥からドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。
そのまま僕がいる部屋の扉が勢いよく開いた。
「おっはよーーう!!」
扉から入ってきたのは髪が肩くらいまである子だった。顔が黒く塗りつぶされたようなモヤがかかっており顔はわからない。
「どーしたの?調子悪いの?」
僕がずっと黙っているから調子が悪いのかと尋ねてきた。僕は首を横に振って調子が悪いわけじゃないことを相手に伝える。
「よかったぁ!じゃあ早くご飯食べよ!ゆい!」
ゆい?誰のことなんだ?
「......もしかして自分のことわかんないの!?嘘ぉ!まさか僕のことも!?」
僕は首を縦に振って肯定を表した。
この子の顔が見えないから表情がわからない。
しばらくの沈黙が続いたあとこの子は色んなことを教えてくれた。
・僕の名前は長瀬 ゆい で8歳である
・あの子は僕と同い年で趣味や好みの共通点が多い
・今いるここは僕の家で、ここにいる人は僕とこの子だけ。
・この家の敷地外には絶対に出ないこと
・あの子の名前は教えてもらえず、思い出して欲しいと言われたため勝手にユユと呼ぶことにした
「ここは僕らの家だからね、家主のことならなんでも知ってるんじゃないかな?
わからないことは聞いてみるといいよ!」
ユユはまるで家が答えてくれると言うような返答をしてきた。人は僕たち2人しかいないのに。
「それよりも、お腹すいたからご飯食べようよ!
先に食堂に行っておくからね!早く来て!」
よほどお腹がすいていたのかそういうと来た時と同じように足音を立てて走っていった。
部屋には僕1人となった。
情報を整理するために部屋を見渡すと僕のいるベッドから少し離れたとこには勉強机と棚、本棚 そしてクローゼットがあった。
それぞれを調べてみたら何か少しでも思い出すかもしれないと思い、勉強机から調べ始めた。
・勉強机は黒い木目調の机で綺麗で机の上にはデスクライトのみがあるだけだった。
・棚は3段で構成されていて1段目はビリビリに破られた日記があった。2段目には文房具類が整頓された状態で収納されており、3段目には辞書などの教材とレターセットが入っていた。
・本棚にはたくさんの本があった。1番下のスペースにはぬいぐるみが置かれておりそのうちのくまのぬいぐるみだけが他と比べて汚れていた。
・クローゼットの中を見ると服がかけられておりほとんどが女の子が着るような可愛らしい洋服だった。
部屋をある程度調べても思い出すことは何も無かったため、ユユがいる食堂に向かうことにした。
部屋を出て食堂に向かっていると他にもたくさんの部屋があった。
食堂につくとユユは既に席に着いていた。
「やっと来た!早く食べよ!」
食事をとるために僕も席に座るとどこからかメイド服と執事服を来た人形が食事を運んできた。
その人形は手がなかったり耳や目などのどこか欠損しているのがほとんどだった。
そんな人形を前にしてもユユはそれが普通だと言うように食事をはじめた。
それを見て僕は考えるのをやめて食事をすることにした。
この家は外の様子がわからないため部屋に戻った時にはもう寝る時間だった。
僕は棚からビリビリに破られた日記とペンを取り出し今日の出来事を記した。
・僕とユユについて
・ユユの言っていたことについて
・食事の際の人形たちについて
・この日記について
今日はもう疲れたな。
明日は他の部屋も調べてみよう。
思い出せることがあるかもしれない。
でもここは心地がいい、何も思い出さない方が楽かもしれない...。
ゆいは眠りについた。
ユユがどこにいるのかは知らない。
箱に囚われている @yukidaihuku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。箱に囚われているの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます