星男
海猫ほたる
星男
「あなたは星依存症です」
医者にそう宣告されたのは、一年ほど前だった。
最初はただ、仲間内で星を送り合っていただけだった。
だが、星を貰うとPVが増える。
その事に気がついた俺は、ひたすら星をくれそうな人を見つけては星を下さいとお願いした。
その結果、何人もの人に星を貰えるようになった。
俺は嬉しくなって、更に何人もの人に星をねだり始めた。
俺は、これは星を貰うゲームだと思うようになって行った。
小説の中身なんかどうでも良かった。だってこれはゲームなんだ。
どうしたらより多く星を貰えるのか、その事だけを考える日々が続く。
星を貰うために、ランキングで星をたくさんもらっている人のタイトルをパクリ、内容をパクリ、キャッチコピーをどんどん過激にして行った。
おかげでどんどん星が貰えるようになった。
俺は、もっと頑張ればもっと星が貰えるかもしれないと思うようになった。
幾ら星をもらっても、もう満足できなくなってしまった。
俺は、小説サイトの星だけでは満足出来なくなった。
毎日金平糖を食べたり、無意識に星空に手をのばしたり、本屋に行くとつい星新一を買ってしまったりし始めた。
取り憑かれたように毎日、画用紙に黄色いクレヨンで星を描き殴った。
パソコンの画面に星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星星と、書き続けていた。
妻と離婚して星子さんにプロポーズした。
そして断られた。
警察を呼ばれた。
独房の中で俺は、星禁断症状に苦しみながら星を求めた。
だが、独房に星はなかった。
星禁断症状が限界を迎えると、ようやく星依存症は治まった。
俺はもう、星を求めなくなった。
代わりに、星が怖くなった。
今度は、星恐怖症になってしまった。
星が怖い。
夜空に星が出ているのも怖い。
金平糖なんて、食べたらアレルギーが出る。
星という文字を見ると異次元に吸い込まれてしまうような気がする。
目を閉ざすと、星が襲ってくる。
もうだめだ。
星の無い世界に行きたい。
それなのに、俺はみてしまった。
かつて俺が書いた、そして投稿した小説。
そこには星が大量に並んでいる。
そして星は今も増え続けていた。
やめてくれ!
もう俺は星なんた見たくないんだ!
星を送らないでくれ!
ああ、誰か……その星の鋭利な角で俺の首を掻っ切ってくれないか。
星男 海猫ほたる @ykohyama
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