少し怖い話~モノクロのビー玉~

双瀬桔梗

モノクロのビー玉

 今まで、怖い思いをした事は一度もないのですが……不思議な体験でもよければ、お話しできますよ。


 ——では、お話ししますね。


 これは去年の夏に体験した話です。あ、私は今、大学二年生なんですけど……。


 去年の夏休みに一人で、久しぶりに田舎に住む祖父母の家へ行きました。ここ数年、いろんな事情から会いに行けてなかったので、一週間程、滞在していたと思います。


 祖父母とのんびり過ごしながら、昔の話をしている内に、なんだか懐かしい気持ちになりまして……。折角なので一日だけ、小さい頃に遊んでいた思い出の場所を、一人で巡る事にしたんです。


 その途中で、モノクロの綺麗なビー玉のような物を拾いました。


 昔、よく虫取りをしていた森の中で拾ったので、後で交番に届けようと思って、忘れないようそれを手に持ったまま歩いていたんです。そしたらしばらくして、後ろから「お姉さん」と、声をかけられました。


 振り返るとそこには、前髪で左目が隠れた女の子が立っていました。片目が隠れていても、一目で可愛いと分かる端正な顔立ちの子で……歳は小学三年生くらいだと思います。


 色白で、隠れていない右目がとても綺麗な澄んだ黒い瞳で、私は思わず女の子に見とれてしまったんです。なぜだか、その女の子にどこか懐かしさを感じたのもあり、まじまじと顔を見ていました。


 すると女の子が「それ、わたしのなの」と、私が持っているモノクロのビー玉を指さしたんです。そこで私はハッと我に返り、それを女の子に渡しました。


 そしたら女の子は微笑んで、「ありがとう」と言ってくれて……その後、どこかへ走り去っていきました。


 祖父母の家に帰宅した後、何となしにその話をしたんです。そしたら祖父母は少し食い気味に、女の子の特徴を事細かに聞いてきました。その後、アルバムを持ってきて、幼い私とあの女の子が一緒に映っている写真を見せてくれました。


 そこでようやく思い出したんです。あの女の子と昔、よく遊んでいた事を。


「この子ね……ある日、森の中で遊んでいる最中に、事故で亡くなって……左目だけが、最後まで見つからなかったんよ……」


 祖母はとても言い辛そうに、それだけ私に伝えてくれました。


 次の日、私は祖父母から場所を聞いて、女の子のお墓参りに行きました。


「○○ちゃん」


 お墓の前で手を合わせていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、あの女の子が立っていたんです。


 昨日は下ろしていた前髪を耳にかけていて、澄んだ綺麗な黒い瞳が両目共、見えていました。


 女の子はニコリと笑うと、「○○ちゃん、ありがとう」と言って、手を振りながら消えてしまいました。


 この話をすると、「怖い」って言う人もいるんですけど……私はあの子の左目を見つけられて良かったって、今でも思っています。



【終】

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