すぐ死ぬ村人に転生したので shift コマンドで生き延びることにした

第19話 ニュー ワールド

　目を上げると、空っぽのスタジオが目に入った。

　本当に空っぽだ。背景も無い。

　俺は、ひょいと螺旋階段からそのスタジオの端に飛び降りた。

　そのままスタジオに入っていこうとすると、ガン！ と鼻先に何か当たった。

「いてて……」

　一歩下がって手を出してみると、壁のようになっている。透明な壁があるようだ。俺はスタジオの周りを見回した。

　右手に俺の背の位の柱が立っていて、明かりが灯っている。

　そちらの方に歩いて行った。

　近くまで来ると、柱の上部に小さなスクリーンとキーパッドが見えた。

　スクリーンには「ユーザー名」と「パスワード」と表示された二つのフィールドがあった。考える必要も無かった。

　俺は、仕事で使っていた管理者権限のあるアカウントのユーザー名とパスワードを入力した。

　俺が死んでしまったのでアカウントはもう消去されているかとも思ったがものは試しだ。

　緑色のエンター キーを押すと、見えない壁はあっさり解除された。

　スタジオに入る。

　頭上でライトが点灯し、空間の真ん中に半透明のコードが浮かんで見えた。

　プログラムの初期設定をする main() 関数が流れていく。どうやらスタジオに入室すると、初期化が始まるらしい。

　あれよあれよと言う間にゲームの初期環境が出来上がった。

　目前に初期化ウィンドウが浮かんでいる。

　これから生成するワールドに名前を付けろと表示されている。

　俺は仮想キーボードのボタンを押した。しばらく考えてから、キーボードから Togenkyo（桃源郷）と入力した。

　もう、納期の心配も、バイトの世話もしなくていい。俺の好きなように村を作るのだ。

　俺の桃源郷を。

第一部　終了

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　皆様、いつもお読みいただきありがとうございます 🙇‍♀️

　ストックが尽きてしまったので、しばらくお休みをいただいてこの先を書き進めたいと思います 🥲　エタらせませんので、気長にお待ちいただけると幸いです！

　十一月末までは『ドルメン』（カクヨムみんチャレ化計画）の翻訳に注力しますので、『ドルメン』の方も読んでいただけると嬉しいです！　『ドルメン』の第 45 話あたりで「あらすじまとめ」を掲載する予定なので、そこから残りを読んでいただくこともできます！　よろしくお願いします！

イカワ拝