第18話 後悔
俺は、螺旋階段を見上げた。
ゲームのシーンから逃れられたので、どこかに行こうと思う。
行くとしたら、クラフト モードのどこかだ。
どこかのバトル シーンに入れる気はしないし、入ってもまたバトルに巻き込まれて死ぬなんてまっぴらごめんだ。
クラフト モードの人気のない領域で家を作ってそこでまったり過ごそう。
この螺旋階段をつたって行けばクラフト モードのどこかに着くとは思うが、上に行けばいいのか、下に行けばいいのかはわからない。
ただ、下に行って見当が外れたときにまた登ってくるよりかは、先に登って下ってくる方が良い。
そう思って俺は階段を登り始めた。
嬉しいことに、階段を登り始めると非常にゆっくりした速度で動いていた階段が普通のエスカレーターのような速度になった。思ったより労力を使わずに上に登って行けそうだった。
階段を登りながら考えた。
俺がここに転生したということは、俺は徹夜明けに非常階段を踏み外して死んでしまったに違いない。
もうどれくらい時間が経っているんだろう。徹夜したのはゲームのリリースの一週間前だった。
俺が蕪を植え始めたんだから、リリースは済んでいるはずだ。それから蕪植えカンストも何回かあったし、サーバーの引っ越しもあったから、三週間は経っているだろう。
俺の死体の第一発見者は城崎だっただろうか。びっくりしただろうな。救急車とか呼んだのかな。あいつのことだから、要領よく上司や家族に連絡を取ったんだろう。
家族か……。
親父とおふくろはショックだったろう。でも、きっと城崎が上手いこと言って慰めたに違いない。あいつ、さらっと親切な言葉かけるの得意だもんな。
ふと、俺は城崎に「過労死したら化けて出てやる」と言ったのを思い出した。
そんな矢先に、俺が徹夜明けで階段から落ちて死んだら、城崎は自分を責めるかもしれない。
悪いことをした。そんな憎まれ口ではなく、コーヒーとサンドイッチのお礼くらい言っておけば良かった。
ごめん、城崎。
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