第17話 システム エラー
「クラクエ」には全国からユーザーがアクセスしている。こういった大規模なデータを抱えているシステムでは、局所、局所でデータに矛盾が出ることがある。
北海道、名古屋、九州に住んでいる三人のユーザーがパーティーを組んでドラゴン退治に行ったとしよう。北海道のユーザーがドラゴンを退治しても、名古屋と九州のユーザーがアクセスしているシステムで「ドラゴンが退治された」とデータが書き換えられるまでにちょっと時間がかかる……、そんな感じだ。
大概は、名古屋と九州でのデータ書き換えまでには何も起こらない。しかし、北海道と名古屋でそれぞれ異なる方法でドラゴンを同時に倒したとすると、どちらのデータを優先させていいか分からない。こんなときの対策が取られていないときはエラーになる。
このエラーが深刻な場合は、システム全体が止まってしまう。
そのときには、データの矛盾を解消するために、データを書き換える直前の状態まで戻してやる。
これをロールバックと言う。
今、俺が見ているのはこのロールバックだ。
多分、移行したサーバーでの実行中にシステム エラーが起きたのだろう。そのエラーから回復するためにロールバックが実行されたのだ。
しばらくすると、逆回転が終わり、再びすべてのスタジオの電源がガシャンという音と共に落ちた。そして、またボッという音がしてスタジオに明かりが灯った。
しかし、俺がいたドラゴンと勇者のシーンだけは暗いままだった。
あ、やべえ。
このシーン、エラーの原因として切り離されたんだろう。ディスクが一杯になったせいだ。だからモブなんかが動くようにしてゲームの容量増やすなって言ったのに……。それにしても、うちの納品物がシステム エラーの原因って。誰が解析するんだ。誰が修正するんだ。
いや、だから、転生してまで会社の心配すんのやめろっての、俺。
トラブルは全部プロジェクト マネージャー経由だからな。
……頑張れ、城崎。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます