星の鞄

菫野

星の鞄

みづいろの毛深きけもの夏空はわれを世界に籠めなむとして


神の目であつた葡萄のひとつぶをひらきゆく夜の穴へと落とす


匣となり蓋ひらくなり夜更け頃わが胸底に溜まる月光


ぜつぼうの手前であがる遠花火 あなたは氷のやうに溶けゆく


ひとりでにひらくページの文字辿る あなたのねむり・星の・鞄に


骨に火をかくしたひととフルートは似てゐる月のやうにはだかで


アイスブルーのリボンで天地縫ひとめて地球は人形ドールの眼球となる


地震なゐふかくひそみゐるうみ黄昏のやうな小石を汀で拾ひ


にぶき音たててふたたび起動するスマホの画面 猫過りゐて


ほんたうはたれもうまれてゐないのよここはかみさまのかかとのなか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星の鞄 菫野 @ayagonmail

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ