山のUMA

三塚章

第1話 山のUMA

 とあるキャンプ場で、キャンプを楽しもうとしていると、友人が変な事を言い出した。

「ここには、UMAがいるらしい」

「UMA?」

 私は、テントにフレームを通しながら、聞き返した。

 知らない人のために少し説明しておくと、UMAというのは、ネッシーとか雪男とか、そういった類の物だ。

 ああ、この友人はこういった類の話が大好物だった、と今さらながらに思い出す。

 なんでも、この辺りの山ではニンダというUMAが目撃されているらしい。

 基本的には人型だが、足はヒレがあって大きく見える。大雨の夜に、たまにグーグーと鳴く声が麓まで聞こえてくる。河童に似ているが、皿はなく、体色は赤でも緑でもない、目が覚めるような青だという。

「またまた、そんなのいるわけないじゃん」

 そう言いながら、私はさっと辺りを見回した。

 ここは気軽にキャンプできる、というのがウリで、駐車場は少し離れた所にあるし、水道だってあるし、遠くにはちらほら他のキャンパーのテントも見える。

 人も通らぬ深い山、というのならともかく、そんな未知の生き物が隠れ住んでいるわけがない。

 顔の周りを飛び回る蚊がうっとおしく、私はテント設営の手を止めた。中空のそいつを両手でパチンと叩き潰す。仕留めたかと両手を確認すると、つぶれた蚊からべったりと青い血らしき液体がにじみ出ていた。

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山のUMA 三塚章 @mituduka

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