第48話 馬車内にて

 それから30分も経たない内にアル、リセチ、ベアトリーチェの3人はスタアが所持する豪華な馬車の1つに乗り込んでいた。


 アルたちが所持する馬車は性能が低いということで、半ば無理やりスタアの馬車に乗せられている。


 もちろん馬車の内部は空間魔法によって広々としている上、内装は誰が見ても金が掛かっていると分かる豪華なものだった。


 スタアの部下の画策により、まんまと『神聖なる騎士団セイクリッドナイツ』に同行する羽目になった3人は、任務内容について話し合っていた。


「そういえばさっき言われた『自由任務』てのは、どんな任務なの?」


 アルは出発の直前に巨漢の男に言われたことを思い出して2人に質問した。


「任務内容を自分たちで決めていい任務のことだよ」


「え?どういうこと?任務ってギルドの命令で何かすることでしょ?」

 

 リセチの説明が理解できないアルは頭に『?』を浮かべながら詳細な説明を求めた。


「任務って大きく分けて2種類あって、1つが『重要任務』もう1つが『自由任務』って言うのね。『重要任務』はギルド側から、この巣の周辺を調査してください、とか具体的な指示が出されるもの。報酬も事前に決まってる。で、もう1つの『自由任務』は、巣の内部に入って資材を取ってきます。3日後に帰る予定です。みたいに、内容を自分たちで決められる任務なの。だから報酬も事前には決まってなくて、持ち帰った資源を売って、それを報酬とするんだよ。巣に行くための口実って感じね」


「へぇ。今回の任務はどんな任務なんだろ」


 リセチの解説を聞いたアルの口から、不安と期待が入り混じった声がついて出る。


「えっと『極東1号』の下層まで行くって言ってたかな。『極東1号』は攻略済みの巣で、巣の規模が『1』の小規模。主に共同で資源を回収しながらパーティの練度を高めることが目的らしいわ」


「ふむ。小規模と言えど、さすがに下層まで行くとなると、だいぶ難易度が高いと見ているがどうなんだろうか」


 ベアトリーチェが不安そうな声を挙げる。


「うん。『狂火乱武』がまだBランクだった時に下層に行ったことあるけど、結構ギリギリの戦いだったんだよねー。『神聖なる騎士団セイクリッドナイツ』が本当にAランクの実力があるなら余裕だけど、もしもそうじゃなかったら……」


 リセチの無言は不安を煽った。


「やはり今からでも辞退した方が良いのではないか?」


「でもギルドに申請されちゃったから、ここで辞退したら重いペナルティが科せられちゃうんだよ……」


「ペナルティ、そんなに重いものなのか?」


「相手の許可なく辞退したとなると、相手に命の危険が及ぶって判断になるだろうからね。今後のアタシ達の活動がかなり制限されちゃうのよ。最悪、冒険者を除名されるかも」


「むぅ。そうなるとこの任務に参加は必須か……。極力身を守ることを考えないといけないのに、君たちと一度も戦闘を共にしたことが無いというのも非常にマズイ」


「はぁ……。本当に問題が山積みね。特に……」


 三角座りの膝の上に顎を乗せ、リセチが心配そうに見つめる先にはアルが居た。


「まぁ、僕……だよね」


「AGIの問題は一応は解決したし、戦闘の立ち回りとかは教えてあげれたけど、どれも実戦的な練習に移る前だったからなぁ」


 うーん、と呟きながら顎に手を当て、リセチは考える仕草をした。


「まぁでも……結局アルの魔法さえ当たれば勝てそうだし、難しく考えなくていいのかなー。敵を見つけたら、バーン!ドーン!……えへへ。これができたら最高。頼むよ?アルぅ」


 リセチはいたずらっぽく笑いながら、アルの右手に装着されてる腕輪を指先でコツンと触れる。


「ははっ……そうだな。威力は問題ないが、魔法の射程に入る前に蟲の索敵範囲内に入ってしまうから、難しいだろうな。しかし、あの魔法を連携の練習無しで使うのか……いささか不安が残るな」


 そのやり取りを見ていたベアトリーチェは、数日前のことを思い出す。





◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


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読んでいて


『やっぱり火力はロマンがあるよな!』


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半蟲半人~蟲に苗床にされた僕だったが、その時得たチート能力を使って世界を救う~ きさらぎ @kisaragifantasy0521

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