第14話 全然異性として意識されないんだけど⁉ ヒロイン:詞視点


「詞! あんた三条君と一緒に登校してきたの⁉」


 きーくんが教室を後にしてから、茜が前の席から振り向いて私にそんなことを言ってきた。


 私がこくんと頷くと、茜は目をぱちくりとさせる。


「嘘でしょ、あんなに無謀すぎる作戦が上手く言ったってこと? まさか、あんな作戦が上手くいくなんて……詞?」


 しかし、私がむくれていると茜はすぐに私の表情に気づいたようで、こてんと首を傾げる。


「ぐぬぬ……全然、上手くいってない」


 私がそう言うと、茜は眉を下げる。


「上手くいってない? え、でも、昨日一緒に帰ってたよね? なんか学校中で噂になってるみたいだけど」


 茜はそう言うと、頭にはてなマークを浮かべる。


 私は茜の言葉を受けて、登校中に私たちに向けられていた視線を思い出す。


 確かに、すれ違う生徒たちは私たちのことをカップルだと勘違いしているような視線を向けていた。


 それには私も満足していたのだけど、問題は当の本人である。


「きーくん、私のことを全然異性として意識してないんだけどっ」


 私はそう言うと、頬を膨らませて悪くもない茜をじっと見る。


 茜は私の視線を受けて、ふいっと気まずそうに頬を掻きながら視線を逸らした。


 ……そうだよね。別に、茜が悪いわけじゃないんだけどね。


 私はどこにやったらいいのか分からない感情を悶々とさせながら、今はいないきーくんの席を見ながら言葉を続ける。


「たまにさ、異性として意識してるのかなって思うときはあるんだけどさっ。なんか、意識を逸らされると言うか空振りすることが多いと言うかっ」


 家に私を読んで緊張しているのかと思ったら力強く首を横に振るし、エプロン姿の私に邪な感情を覚えているのかと思ったらアニメの話を熱弁し始める。


 結局、私の方がドキドキさせ続けられるのだ。


 こんなの、全然フェアじゃない!


「自分で言っておいてなんだけど、こんなに気づかないものなのかなぁ」


 私はそう言いながら、控えめな胸に手を置く。


 確かに、私のスタイルは他の女子ほど発達していない。


 それでも、男子と見間違得られるほど女性らしさが欠如しているとは思わなかった。


「……そりゃ、私が念を押したわけだし」


「茜?」


 私がうな垂れていると、茜が何かを呟いたような気がした。


 茜は私が顔を上げると、ワタワタとした様子で手を横に振る。


「い、いや、なんでもないよ! で、でも、あれだよ。傍から見ると、やっぱり三条君も詞のことを意識し始めているんじゃないかなぁ」


「本当? なんでそう思ったの?」


 茜が目を泳がせながら言うのを聞いて、私はジトっとした目を茜に向ける。


 多分、茜は気を遣ってくれているんだろうなぁ。


 私がそう考えていると、茜がちょっと待ってと言ってしばらく考え込む。


 それから、茜は私をじっと見てから、諦めるように小さく気を吐く。


「……あのね、あんまりこういうことは言うべきじゃないと思って、言えなかったんだけどね」


 茜はどこか遠くを見るようにしながらそう言ってから、私の太ももに目を落す。


「三条君、詞の太ももよく見てるの」


「…………え⁉ う、うそ⁉」


 私は思っていなかった言葉を前に、きゅっと足を閉じる。


 すると、茜はそのまま言葉を続ける。


「詞って胸はあれでもさ、脚が綺麗だよね。だからさ、三条君も本能的に魅かれてるんだと思うの」


「そ、そうだったんだ。きーくんが脚フェチ……」


 私は知らなかったきーくんの性癖を聞かされて、思わず顔を赤らめる。


 まさか、しばらく会わないうちに、きーくんがそんなふうに成長しているだなんて。


「……うん。やっぱり、私のアドリブ力って半端ないな」


「茜?」


「い、いや、なんでもないよ! そうだよ、三条君って脚フェチだよ!」


 私は茜の力強い説得によって、きーくんが脚に興奮する男の子だということを知ったのだった。


 あれ? 茜汗かきすぎじゃない?


 そんなことを思いながら、私はきーくんが私を少しずつ異性として意識していることを知ったのだった。


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再会した親友が美少女になっていたので、『おまえ女だったのか⁉』と言ったら、首を横に振られた件。 ~初恋の相手に男だと思われていた乙女の可愛らしい復讐劇。 荒井竜馬 @saamon_

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