第29話 王子と聖女の婚約式2

「俺、幸せだよ。こんな日が迎えられるなんて」


 ライファンは優しくささやく。


「俺はリリッシェは俺に興味がないとずっと思ってた」


「そんなことないって、何回もいったよ」


「リリッシェは子どものころと比べて、ものすごく俺に冷たかったよな?」


 ライファンはからかうような目をする。


「そんなことないってば」


「ああ、そうだったみたいだ」


 彼は子どものようにわらう。


 でも、まだ夢のようだと、ライファンは瞳を閉じた。


 熱のこもった言葉に、リリッシェの頬は赤くなった。

 かわいいなと、ライファンは腕に力を込めた。


 雪が舞ってきた。


 雪の中に、雪の結晶が混ざり始める。


 結晶は日差しを受けて輝いていた。城の周りの木々に降り積もる。

 枝葉の間で灯のように光を放っていた。




                  終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雪の結晶が降る夜 近江結衣 @25888955

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ