第2話  解錠

「本当にいいの? 倉に入って」


 居間から庭へ。サンダルを履きながら、叔母に尋ねながら聞く。ふと、顔を上げて叔母の顔を確認する。ジッと、目的地である倉を見る敬子叔母さんの姿。


「大丈夫よ、心配しなくていいわ」

「心配なんてしてないけど」


 叔母は、恵の目をみて諭すように言う。違和感を感じる。首の後ろがチリチリするような、そんな何とも言えない肌感覚。


「恵ちゃん、倉の鍵開けてみる?」

「いいの?」

「ええ、勿論」


 恵が手を差し出した先に、鍵が置かれる。くすんだ石が、真ん中につけられその周りには細やかな装飾。


「これが鍵なの? 思ったより小さいね」


 太陽に透かすように、鍵を色々な角度からみれば鍵につけられている石に注目がいく。何かしらの鉱物。鉱物は、太陽には透けず何も写さない。が、そこに何かあるような感覚に襲われる。


「ねぇ、敬子叔母さん」


 一通り見た後正面に目を向ければ、叔母の姿は何処にもいない。辺りを見渡せば、倉の正面に叔母の姿。慌てて、駆けよっていく。右の手のひらを押さえながら、ジッと扉を見つめている敬子叔母さんの姿。


「恵。その鍵で開けて」


 恵は、正面の倉を見ながら叔母に言われる。


「え?」

「ほら、そこに入れて回すの。分かる?」


 叔母が指を指した先には、錠前が。不思議な形をしている。今日は、気温が高く暑い日。汗が垂れるが、何故か嫌な涼しささえ覚える。


「敬子叔母さんが開けていいよ」

「開けて。恵が開けるの」

「え?」


 後ろから、恵の肌をなぞるように誘導する手。叔母の手だ。抱きしめるような形で、誘導する叔母。サーッと、恵の肌感覚がおかしく。視界には錠前しか映らない。後押しされるような形で鍵が錠前へと嵌まり、動く。


「ほら、やっと開いてく」




 




 









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ノスタルジックパラサイト 多田真 @garamuto

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