進路相談

「次回作に悩んでいるんです」


「スランプはもうやったしなあ」


「なんの話ですか? 実は小説家をしていまして」


「ほう」


「タイトルは……少々言いづらいのですが……超本格ラブコメ小説『恋は突然 メロりん♡QUE』というのを連載してまして……」


「ちょっと待って。学生さん?」


「はい、タイトルは編集者に提案してもらって」


「そうなんだ」


「先日、編集者が急病になってしまって打ち合わせが難しくなったんです」


「それは困るね」


「実はヒロインの案も編集者に出してもらってて……主人公の性格も編集者に決めてもらって……展開も編集者に……」


「敏腕編集者だったんだね」


「最初に送ったのは重厚なハイファンタジー小説でした。ですがラブコメのほうが売れるからと言われて」


「君自身はなにを決めたの?」


「僕は小説家になれればそれでよかったんです」


「なるほどなるほど」


「一人でラブコメなんて書いたことがないんです。どうしたらいいんでしょうか」


「君が書きたいハイファンタジーにしたらいい」


「でも売れないと困ります」


「大丈夫だよ」



 少年はファンタジー小説を書き上げた。


 小説は売れて、絶賛された。


 少年は小説家をやめた。


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魔法使いドロシーのなんでも相談室 ~お悩み『解決』します~ 月這山中 @mooncreeper

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