喧嘩の仲裁

「親友と喧嘩してしまったんです」


「それはつらいね」


「はい。『メロキュー』のヒロインの呼称で大喧嘩を」


「お帰りください」


「超本格ラブコメ小説『恋は突然 メロりん♡QUE』のヒロイン・雁場るなちゃんに相応しいのは『ガンバちゃん』だと俺は思うのです」


「続けないで」


「なのに友達は頑なに『るなちゃん』と呼ぶのです。ガンバちゃんのトラウマはその空回り属性から『頑張るな』と言われ続けたことなのにですよ。自分の名前がそのトラウマそのものになる、決め手の下の名前をですよ? 人の心がないとは思いませんか?」


「どうでもいいけど、友達の主張は?」


「それが『るなちゃんのほうがかわいいから』だけ。だけ! あまりにも浅慮ではありませんか?!」


「ふーん」


「ガンバちゃんの名前を呼ぶ度に『ガンバッ!』とエールを送りたいんです! 俺は!」


「でも両親が名付けたのは『るなちゃん』のほうじゃないの?」


「◎×◆△!!!!!」


「逆鱗に触れたか」


「とにかく奴とは解り合えない!!」


「話は聴いたぞ、我が友よ!!」


「話をすれば!!」


「増えないでほしい」


「魔法使いに呼称統一でもお願いしに来たのだろう! なにがあろうと俺は絶対に『るなちゃん』と呼ぶ!!」


「うるさいサイコ野郎めが! 『ガンバちゃん』だ!!」


「◎×◆△!!!!!」


「■△●%!!!!!」


「ラップバトルでもしたら?」


 二人は地下へと送られた。


「やっぱり第十二巻のあの展開は神」


「そうだな。あと作者は俺らより年上だと思う」


「おじさんだよな」


 二人は意見を統一して戻ってきた。


「戻ってこないで」

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