第5話 この世界、ゲーム世界ってマ??
———アナスタシアが言うには、俺は3年後に死ぬらしい。
それも結構無惨に死んでしまうんだとか。
「…………マジ??」
「大マジよ、アンタは3年後に死ぬわ」
「死ぬわ、じゃねーよ。他人事だからって軽々しく死ぬとか言うな、怖過ぎんだろ!」
てか『アンタは未来で死にます』何て言われても信じれないっつーの。
でも……転生がある以上、絶対にあり得ないなんて言い切れないんだよなぁ。
「てか、何で俺が3年後に死ぬって分かるんだよ? 予知能力でも持ってんのか?」
俺は適当に誰でも思い付きそうなことを述べたのだが……アナスタシアは何とも言えない微妙な表情を浮かべた。
「……予知能力ではないわね。ただ、貴方に教えるにはちょっと関係値が足りないわ」
「うわ出たよめんどくさ。せっかく転生者が2人もい……る……いや待てよ?」
彼女は転生者なんだよな?
しかも日本の若者語が分かるんだから、俺とそう年も離れていないはず。
そんで、俺は知らなくて彼女だけが知っている…………ああ、なるほどね。
ようやく合点いった俺は、
「———この世界、何かのゲームの世界にそっくりなんだろ?」
アナスタシアにそんな推測をぶつけた。
当の彼女は、俺の推測が当たっていると告げるかの如く目を見開いている。
「ほぇ、ビンゴなんだ。ま、原作知識の皆無な俺には意味ない情報だけど」
「な、何で分かったの……?」
「いや分かりやすいだろ。元オタクを舐めんなよ、この程度速攻で思い付くわ」
「別にオタクを自慢されても……まぁ私もオタクなのはオタクなのだけど」
だろうな。
じゃないと余程のことがないとストーリーとか覚えてないよ。
「……なぁ、因みに俺はどうしたら良いんだ?」
「簡単よ、強くなれば良いの。誰にも殺されないくらいにね」
「んな無茶な」
幾ら俺が神童と謳われようと、世の中上を見たらキリがないのを知っている。
実際2年以上経った今でも父さんに勝てるビジョンが浮かばないのだから。
てかあんなバケモノに勝てる方がおかしいってんだ。
誰が瞬きの内に10回以上剣を振り回す奴に勝てるんだよ。
今更ながらに父さんの異次元具合にドン引きしていると。
「———ねぇ、手を組まない?」
「はい?」
アナスタシアが俺の顔を覗き込んで、そう告げてきた。
突然のことでキョトンとする俺に、アナスタシアは苦渋に満ちた表情を浮かべて続ける。
「私、この世界のメインヒロインの1人なの。しかも1番最初のね? でも———私、この世界の主人公が嫌いなのよ」
「お、おう……」
「だって愛する人を放ってどんどん色んな人を助けて、その都度愛する人増やして、最後には世界を救おうなんて言い出すのよ? 普通に頭おかしいじゃない」
「ま、まぁ……」
怒涛の勢いで捲し立てるアナスタシアの姿に俺は気圧され、肯定するだけのロボットと化した。
いや確かに彼女の言ってることも分かるよ?
俺は男側だからハーレム羨まけしからんとしか感じんけど、女側からすれば連続で浮気を繰り返して自分の意見を無視して付き合い、それを許容しろと言う挙げ句、最後には『世界を俺が救うんだ!』なんて言っちゃう頭の……おっと、俺も主人公が嫌いになってきたぞ。
てか絶対主人公って困ってる奴は見捨てられない系の人じゃん?
アレって、フィクションだからまだ良いけど……現実、それも恋人だったら普通に俺はグーで殴る自信がある。
「おい、アナスタシア、朗報だぞ! 俺、主人公がめっちゃ嫌いになった!」
「な、何よ、急に大声だして……。いえ、共感してくれるのは嬉しいのだけど……」
そう言うお前も如何に主人公が腹立つか力説してたじゃん、ずっと。
「お前はつまり、主人公と絶対に結ばれたくないし何なら関わりたくないから俺と共同戦線を張ろうって言うんだろ? 対価は俺が死なないように強くするって感じ?」
「ええ、まぁそうね。もし手を組んでくれるなら……貴方の右腕に封印されてる邪神の力の使い方も教えてあげるわ!」
ぐいっと多少興奮気味に前のめりになる俺に、瞳に期待の光を宿したアナスタシアが何度も頷く。
———邪神の力の使い方も教える。
あの、今まで毎日毎日包帯を巻かないといけないクソ面倒なお荷物でしか無かった邪神が遂に俺の役に立つのだ。
これほど俺の心が動かされる提案はない。
まぁつまりは———こちらに断る理由など一切無いのである。
「———これから宜しく、アナスタシア」
「———っ! え、ええ! こちらこそ宜しく、オルガ!」
俺とアナスタシアは、お互いに手を差し出し、固く握手を交わした。
この同盟が、今後の2人どころか世界の未来を変える大きな分岐点であることなど、俺達が知る由もなかった———。
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