チェーホフの銃を撃つのは誰?

五木史人

ぼくは演劇部の女子部員が大好き♪

ぼく明彦あきひこは、演劇部の女子部員の陽紀はるきが、大好きだ。

2人っきりの演劇部員なせいもあって、恋に落ちたと言っても過言ではない。

ちなみに付き合ってはない。


残念な事に。


ブラスバンド部が練習する音と、強豪女子バレー部のボールの弾ける音が、放課後を演出していた。


体育館のステージで、ぼく明彦あきひこは女子部員の陽紀はるきに言った。

「髪をピンクの染めたからって、妖精には成れないよ」

「ピンクの髪に染めたら女の子は妖精になれるよ、ほら!」

彼女はそう言うと、妖精のように走り回った。


演劇部のぼくと彼女は現在、即興劇中だ。

即興劇ってのは、あれだ。

あの~役者がアドリブだけで劇を進めていく演劇だ。


強豪女子バレー部は練習に夢中だが、チラチラと見ている部員もいない事はない。

でもぼくらは演劇部、見られてなんぼだ。


ステージのテーブルの上には、ライフルが置いてあった。

『チェーホフの銃』と言う奴だ。

ゆえに即興劇のどこかで撃たれなければならない。

どうしたものか?

誰が撃つのか?

撃たれるのは誰か?

ぼくかピンクの髪の妖精か?


「さあ大人しくしてないで、明彦くんもピンクに髪を染めるのよ」

陽紀に言われて、ぼくはピンクのウィッグを被った。そして、

「わああ、凄い、ぼくも妖精になれた」

そう言いながら、彼女とステージを走り回った。


「さあ妖精の明彦くんおいで~」

「妖精の陽紀ちゃん待って~」

「あはははははは」

「あはははははは」


かなりアホなステージだ。

そして、やる気の欠片もない。

だって今日は午後にプールの授業があって、さらにだらけているのだ。


「あはははははは」

「あはははははは」


ぼくたちが、しつこかったのかも知れない。


その時だった、テーブルに置かれたライフルが撃たれた。

体育館のステージに、大きな銃声が響いた。


撃たれたのは、ぼくらしい。


ステージのテーブルを見ると、強豪女子バレー部の主将が、ライフルを構えていた。

「お前らいい加減にせえよ!こっちは真剣に練習してんじゃ!お前らも、ちょっとはやる気を見せろや!」


さすが強豪女子バレー部の主将だ。

ぼくらみたいな、ふらふらとした暇つぶしの演劇部員とは訳が違う。


「「すいません」」

ぼくらは謝り、それから、ぼくらは幕を閉じ、そこで演劇部の練習することになった。


でもね、名探偵なら気づいたかも知れない、この即興劇に仕組まれた罠を!


ぼくは陽紀さんとお付き合いがしたいんのだ!

その為には、学校内で2人だけの密室を手に入れる必要がある。

公然と!

密室で仲の良い部員の壁を壊すのだ!

良いお友達なんて嫌なんじゃ!




         完

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チェーホフの銃を撃つのは誰? 五木史人 @ituki-siso

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