【短編】世界との再会
ずんだらもち子
世界との再会
夏休み、俺と親友の浅井は深夜に家を抜け出し、遊びまわっていた。都心から離れた片田舎、特に何もなく、意味もないが楽しかった。
深夜3時頃、ものすごいスピードの車が一つ手前の信号を無視して、俺たちに突っ込んできた。
直前に気付いたのか、ハンドルを切り、車体は俺の後ろ――浅井の方へ突っ込んでいった。
宙を舞う友の体。後頭部が地面を打つ鈍い音。広がる血溜まり。逃げ去る車――。
俺は頭が真っ白になった。救急車を呼べば大騒ぎになる。てか、駆け寄るべきなのに血が怖くて腰が抜けた。
「おお、これはいい! 夜な夜な探していた甲斐があった」
場に似つかわぬ陽気な声。白衣を着た長髪の男が背後から現れた。俺に構うことなく浅井の傍に膝をつく。
脈を取り、瞳孔にライトを当てる。
「よし、死んでおる」
よし?
「小僧、儂に任せろ。生き返らせてやる」
「え、どう――」
「詮索無用に他言無用。余計な死体は必要ない」
その一言が俺の自由を奪った。
それから医者らしき男は怪しげな連中と浅井を連れ去ってしまった。俺の連絡先を控えて。
浅井は夜中に家出したと推定され、俺は浅井の両親から泣きながらの質問攻めに合ったが、何も知らないと言い張った。良心の呵責に苛まれながら、それでも浅井が生き返るのだったらと俺は耐えた。半年後、大学進学で地元を離れたことも後押しして俺は秘密を守ることができた。
連絡があったのはあれから7年後だった。片時も浅井を忘れることはなかった、が。
指定された場所に向かうと、医者と、浅井が7年前の姿のままそこに立っていた。
「浅井――」駆け出した足を止めてしまう。
どういうことだ?
再会の喜びよりも、疑念の浸食が早い。
「儂の発案した死者蘇生の薬が完成したのじゃ。ほれ、ゾンビでもなんでもないぞ」
確かに肉体に腐敗しているような様子はない。
「じゃあな。特別に無料じゃぞ」
医者はあっさり去っていった。死者を復活させる薬があれば一儲けできるだろうからな。
「……お前、本当に浅井なのか」
「ていうかお前こそ上岡なのか?」
一先ず、彼の両親の元へ一緒に向かう。
両親も最初は困惑していたがやがて親の直感とでも言うか、泣いて抱擁していたが、彼が戸惑いを拭えない表情だった。
浅井はこの先、世界との再会を喜べるんだよな。
それとも俺は、間違っていたのか……?
【短編】世界との再会 ずんだらもち子 @zundaramochi777
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