第29話
十年の歳月が経った。
龍聖はプロ野球選手になり、球界を代表する選手になっている。
並川と友晴君は結婚して、三人の子供に恵まれ、夫婦仲良くしている。
僕はあれから大学を辞めて、小山さんに「 」を譲り受け、お金を援助してもらい「 」を使ったサービスなどを取り扱う会社を起業した。
場所は泉丸書店の向かいだ。
僕は今、会社の応接室でソファに座りながら依頼者と打ち合わせをしている。
「高松さん。お願いしますね」
「はい。必ず成功させますから」
「はい。ありがとうございます。それじゃ」
依頼者はソファから立ち上がり、ドアを開けて去って行った。
「パパ!」
部屋の外から息子の優也が僕に駆け寄ってくる。
「どうした?優也」
僕は優也を抱きかかえて訊ねた。
「仕事終わったの?」
「そうだよ」
「もう走っちゃ駄目って言ってるでしょ」
亜子が部屋に入って来て、優也に注意をする。
優也は僕と亜子の子だ。
亜子とは5年前に結婚して、3年前に優也が生まれた。
亜子の母親は彼氏に捨てられ、交通事故で死んだ。父親は不倫相手に金を奪い取られ、どこかに姿を消して、所在も生きているかも分からない。
亜子は普段、隠居した小山さんから譲り受けた泉丸書店の店長をしている。
「ごめんなさい」
優也が亜子に謝る。
「元気が有り余ってるんだよな」
「うん」
優也は笑顔で答える。
「甘やかさないの」
亜子が僕を睨んで注意してくる。
「ごめん、ごめん」
「おなかすいた。ごはん」
優也がねだってくる。
「仕事も終わったし、ご飯でも行くか」
「やったー」
僕は優也を肩車する。
「行こっか」
僕はそう言って、右手で亜子の左手を握った。
「はい」
亜子は手を握り返して言った。
僕は「 」に出会い、「 」のおかげで踏み出せなかった一歩を踏み出す事が出来て、
人生が変わった。
たった一歩。たった一歩かもしれない、でも、そのたった一歩を踏み出すだけで世界が変わるのだ。
僕はその一歩を踏み出す手助けをする今の仕事が出来て幸せだ。
そして、大事な人が側にいるのがなによりの幸せだ。
僕は隣のいる亜子に微笑んだ。
亜子は僕が微笑んでいるのに気づき、照れくさそうに微笑み返した。
189 APURO @roki0102
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