第33話 頭脳警察『Live Document 1972 - 1975』その2

 さてDISC3となりますが、今回のBOXの目玉の一つと言えるものです。1973年8月15日、『俳優座劇場ロックコンサート週間』というイベントに参加した時のものです。このイベントは1週間に渡り、1日に2,3組のアーチストが演奏するイベントで、当時、マネージャー間の仲が良かった、頭脳警察、四人囃子、そしてあんぜんBANDも出演しています。全部で17のグループが参加した、当時としては大掛かりなもので、翌年の『ワンステップフェスティバル』の先駆けとなったと言ってもいいかもしれません。


 DISC2に続いての鈴木兄弟参加時の音源ですが、ありがたい事に良質な音質となっています。わずか数か月で頭脳警察を去ってしまう鈴木兄弟ですが、それだけに貴重な音源となっています。それに加えて、あまりライブでは演奏しない曲も演奏していたりするのも貴重です。特に『イエスマン』は、殆ど演奏されてない曲です。アルバムではトシも参加していない時期で、ビクターオーケストラをバックに演奏しているのですが、この時の演奏はロック色が強く、冒頭の小気味よいギターが印象的だったりします。まるで別の曲のようで驚きました。また『まるでランボー』や『ハイエナ』、『やけっぱちのルンバ』といった曲は、鈴木兄弟の演奏と相性がいい感じで、アルバム収録のものよりもいい出来ではないかと思ってしまいます。

 演奏技術的には、頭脳警察の歴史において間違いなくトップクラスだと思われる鈴木兄弟です。それだけにほんの僅かな期間でいなくなってしまうのは残念です。脱退理由はわかりませんが、鈴木兄弟の演奏が頭脳警察の色とは合わなかったのではないかと思ってしまいます。頭脳警察は、どちらかと言うとロック的な重さを持っていますが、鈴木兄弟の演奏はソウル的というか、重さよりはスピード感を重視したような演奏です。悪いとはいいませんが、何となく軽い感じがするというか、若干の違和感を感じます。とはいえ、ギターもベースもキレのある演奏ですので、これはこれで捨てがたいとは思ったりします。特にこの時の『銃をとれ』は第32話にも書いたように、非常にスピード感がある演奏で、アルバム収録の重みのある感じの演奏とは全く違う感じですね。是非、聴き比べてもらいたいものですが、残念ながらSpotify等には上がっていませんね。


 参考までにこちらは第32話で紹介した『白樺湖音楽祭』で演奏された『銃をとれ』です。『俳優座~』の方は、これよりも更にスピード感がある演奏です。


 https://www.youtube.com/watch?v=kJb3Cib9-XQ



 余談ですが、このイベントの最終日に四人囃子も出演しているのですが、この時の演奏が、『'73四人囃子』として東宝レコードからメンバーの了承なしに発売されています。(後年になって完全版も発売されているので、メンバーの了承は取れたのでしょう)元々資料用として録音されていたといいますが、頭脳警察、四人囃子以外のグループも録音されていたのかが気になる所です。もしあるのなら、あんぜんBAND、バッドシーン、キャプテンひろ&スペースバンド、コスモスファクトリー辺りを聴いてみたいです。

 そしてトシが中心となった、エレクトリック・パーカッション・グループというユニットがこのイベントでデビューしています。ドラムに電子音を織り交ぜた実験的なグループという話ですが、是非、聴いてみたいものです。まぁマニア向けでしょうけれど。



『俳優座劇場ロックコンサート週間』 1973年8月15日 俳優座劇場


 1. ウイスキー・ハイウェイ

 2. 麗しのジェット・ダンサー

 3. プリマドンナ

 4. さようなら世界夫人よ

 5. それでも私は

 6. まるでランボー

 7. ハイエナ

 8. やけっぱちのルンバ

 9. コミック雑誌なんか要らない

 10. イエス・マン

 11. ふざけるんじゃねえよ

 12. 時々吠えることがある

 13. 仮面劇のヒーローを告訴しろ

 14. 嵐が待っている

 15. 無冠の帝王

 16. 間違いだらけの歌

 17. 銃をとれ

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反逆の軌跡~PANTA,頭脳警察作品解説~ 榊琉那@The Last One @4574

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