冒頭に死体をおけ
タイトルとキャッチコピーを一生懸命書いたら、次は冒頭です。
カクヨムはPVを見られますから、1話から、2話目でPVが一気に下がる場合があります。これはせっかく1話目は見に来てくれたのですが、やはりそれ以上は読むエネルギーを魅力が上回れなかったということでしょう。
どうすれば魅力的な冒頭になるのでしょうか。
「人間判定」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884878848
髭鯨様
「こんにちは、ユーリ」
声が聞こえた。透き通っていて、とても優しい声。
「聞こえますか、ユーリ」
「……ん」
うまく口を動かせず、力ない声が漏れた。目も開けられないのか、あたりは真っ暗で何も見えなかった。ただ、その優しい声のおかげで、不思議と不安はなかった。
「聞こえていますね、ユーリ」
ユーリ、僕の名だ。それで……えっと……何が起きているんだっけ。
「あなたは……誰ですか?」
「私はアルファ。メトロポリス・アルファの管理者です」
「メトロポリス・アルファ?」
聞き覚えがない単語に思わずオウム返しをする。
「メトロポリス・アルファは内部で一千万人が暮らす巨大生活コミュニティです。今日はこのメトロポリス・アルファのことでお手伝いをお願いしたくて、ユーリに来ていただきました」
「お手伝い……ですか」
※この作品自体、私にとって忘れることの出来ない見事な伏線回収をされている素晴らしいクオリティなのですが、その不思議な世界に引き込む時に、うっすらとした意識から始めるというのが見事な出だしですよね。
ここから、今の状況、主人公の状況の説明などを自然に織り込んでいけるわけです。
「夜の帳、闇の捕食者」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888752968
牧野 麻也様
「お嬢さん、一晩幾らで枕を共にしてくれる?」
突然背後からそう声をかけられ、街灯の下に立っていた女──茶色と白のマダラ模様の外套を肩にかけつつ、そこから覗く服は前合わせで美しいデコルテが街灯の明かりを反射する。スカートからは白い太ももがチラリと見え隠れしつつも、足にはゴツイ編み上げブーツを履いていた──は驚いて振り返った。
※やはり闇のある光景って惹かれますよね。謎、危険、不法、犯罪、これらが一つのキーワードなのかもしれません。
「【短編】蝉の声」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884672333
ボンゴレ☆ビガンゴ様
蝉の歌。
蝉の死骸がぽとぽと地面に落ちてたから、とぼとぼ歩きながら数えてみた。
とぼとぼとぼ、いーち、にーぃ。
ぽとぽとぽと、さーん、しーぃ。
一斉に土から這い出してきて、一斉に死ぬ。一斉に。いっせいに。
みんなで死ねば寂しくないのかな。
ひとりで死ぬから寂しいのかな。
今更ながら考えてみると「死」って地球上のどこにでも転がっている身近なものなんだよね。外国では戦争やテロで毎日殺し合いをしているし、国内だって殺人事件やら交通事故やら病気やら過労死やらで毎日毎日人は死んでいるし、人間に限らなくたって、毎日食べるお肉は可愛い豚さんや牛さんの死の上で得られてるものだし、外を歩けば蝉だってカエルだって、時々猫だって道端で死んでたりするわけだし、家にゴキブリが出れば叩き潰して殺すし、つまり『所詮この世は弱肉強食』ってなわけ。
※この作品もまた、衝撃的なラストが待ち構えているわけですが、やはり出だしも魅力的ですよね。通常であれば忌み嫌われる表現を生々しく散りばめて、恐るべきストーリーへと引き込んでいく。お見事です。
「クラスメイトの妹に「死んでください」と言われてしまいました。。。。」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882804310
「死んでください」
目の前にいる彼女の淡々としたか細い声。高校一年の僕はどう反応すればいいか困ってしまった。
放課後の校門前。生徒らが帰っていく中、僕は足を止めていた。
向かい合って立つ小柄の彼女は、地元中学のセーラー服姿だった。肩まで伸ばした黒髪にあどけなさが残る顔。両手で学校の鞄を正面に持ち、着崩れしてない格好は真面目さが垣間見えていた。
※中略
「人違いじゃないかな」
「県立菅野高校一年B組の川之江卓ですよね?」
氏名とご丁寧にクラスまで言われ、僕はただ、「はい」とうなずくしかなかった。
※中略
「姉さんをたぶらかしてるクラスメイトなど、嫌でも名前を覚えてしまいます」
「姉さん? たぶらかしてる?」
タイトルから、そのままの勢いて冒頭も強いエネルギーで引込んでいきますね、お見事です。
公募ガイドで、面白い企画がありましたので、次のエピソードで抜粋いたします。その名も
「三行小説」
たった三行でどうやって魅力的な出だしを作るのか?
次のエピソードでその例を提示いたします。
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