ペロ。これは麻薬!? 幻聴の原因か!?

夕日ゆうや

薬物だと思った。

 20XX年11月末日。

 冷たい風が吹くようになった秋空。

 一年ももうわずか。



 僕は幻聴が聞こえるようになっていた。


『今すぐ小説の作品を非公開にしろ』

 そんな言葉を突きつけられ、僕は言う通りにした。

 なぜかそんな力のある声だった。


 ふと思った。


 なぜこのような幻聴が聞こえるのか? と。


 僕の結論は『麻薬』というイメージが強かった。

 なぜなら幻聴と聞いて、すぐに連想するワードだからだ。

 むしろ、それ以外に思いつかない。


 人の身でありながら、超常的現象に僕は恐怖していた。

 麻薬ならあり得る。

 大学で習ってきた人体の構造に関して、少しばかりの知識があった。

 故に間違った考え、価値感を身につけてしまった。


 人はそう簡単に幻聴など聞こえやしない。


 加えて僕はストレス負荷があまりかかっていない。

 大きな怪我もしていない。

 原因になるものがなければ自然と『麻薬』という単語がちらつく。


 記憶の中に『(お米をみて)それ麻薬だよ?』という友人の言葉、情報が舞い込んでくる。

 過去の記憶だ。

 そこから常習犯になったのだ。


 過去の記憶はそのようになった。


 今の自分を形作るのが。ならばその記憶を捏造されたら……?


 世界は変わってしまった。


 僕には小説を書くという趣味があった。


 僕は変わった。

 変わってしまった。


「統合失調症です」


 僕は理解した。

 大学のときに学んだことだった。

 麻薬ではなくとも幻聴が聞こえる病気――統合失調症というものを知った。

 ストレス負荷が強かったわけじゃない。


 特別なことは何もなかった。

 過去はある程度、捏造されていた。

 幻聴も、妄想も、過去も全て作り上げられたでっち上げだった。

 病気だった。


 僕は病気だ。

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