不幸な王子

春雷

第1話

 ある王国に不幸な王子がいました。彼は幼くして父と母を流行病で亡くし、祖父母も事故ですでに他界しており、天涯孤独の身となったのです。

 もともと前国王は他国の出身であったため、親戚も遠い海の向こう。しかも戦争中とあっては、会うことも叶いません。

 国王と王妃の葬儀が、盛大に執り行われました。国民はみな悲しみに暮れ、王子を憐れみました。国民はみな、国王と王妃が大好きで、王子のことも大切に思っていたのです。

 酒場の主人が、王子を憐れみ、言いました。

「王子のために何かプレゼントを送ろう」

 その場にいた全員が賛同の意を示し、2日後の戴冠式の後、王子にプレゼントをすることになりました。


 戴冠式は粛々と進み、その後宴会が開かれました。しかし王子は幼く、いまだ両親の死を受け入れられず、悲しみに沈んでいました。

 そこへ酒場の主人が王子に近寄りました。

「王子、恐れながら、少々私どもにお付き合いいただけないでしょうか」

 王子は酒場の主人のことを知っていました。前国王が足繁く通った酒場だったからです。王子がこくりと頷くと、酒場の主人は王子をバルコニーに連れ出しました。

 そこで王子は信じられないものを目にしました。

 そこにあったのは、大量に積み上げられたプレゼント。

 全国民が王子のために贈ったものです。

 綺麗に梱包されたそれらは、城の形に積み上げられていました。

「王子」と酒場の主人が言いました。「これが私どもの気持ちです。ご両親がご逝去され、悲しみに暮れていることと思います。きっと孤独を感じていることでしょう。どうしようもない暗闇に一人取り残され、一筋の光さえ見出せない。それほどまでに深い絶望の中におられると想像します。しかしながら、ここには私どもがいます。ご両親ほど頼れる存在ではないし、賢くもないですが、できる限り王子を支えていきます。今回はそれをお伝えするために、このようなものを用意致しました」

 王子はそのプレゼントの城に駆け寄ると、涙を流しました。

 

 

 

 

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不幸な王子 春雷 @syunrai3333

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