視線の先

緑ノ革

猫の視線の先には……。

 我が家には一匹の猫がいます。

 名前はかりん。


 黒くて小柄な女の子。


 とても活発で、遊ぶのが大好き。

 そんな可愛い家族です。


 ある日のこと。

 いつも通りにかりんと遊んでいると、かりんが突然動きを止めました。

 おもちゃを動かしても反応せず、一点を見つめています。


 なんだろうかと思い、かりんの視線を追ってみると、そこには壁に掛かったカレンダーがありました。


 かりんは目を丸くしながら、しきりに耳を動かしているんです。

 そこに人はいなくて、カレンダーしかなくて。


 かりんにしか見えない誰かがいるのかと思うと、鳥肌が立ちました。


「そ、そうだ、かりん、おやつ食べる?」


 あまりに怖いので、私はかりんの気を引こうとおやつを出しました。

 しかし、かりんは見向きもしません。

 それどころか、興奮した様子でカレンダーのある壁の方に近付こうと歩きだします。


「かりん!」


 慌てて私はかりんを抱き上げました。


 その時です。


『カサカサ』


 と、小さな音がしました。

 恐る恐るカレンダーの方を見ると、カレンダーの裏側から、大きなムカデが顔を出していたのです。


「なんだ、かりんはムカデを気にしてたのかー」


 私はほっと息をつきます。


 ですがそれと同時に、大きなムカデへの恐怖心もこみ上げてきました。

 その後はもう、かりんを部屋から出して殺虫剤片手にムカデと戦いました。




 幽霊じゃなくて良かったですが、ムカデも十分怖かった、という話でした。

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視線の先 緑ノ革 @midori397

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