スコアというのは☆の数のことだろうか。
「これだからカクヨムは嫌い」と槍玉に挙がるところの☆の数の無意味性、つまり、交流が多い人ほど『知り合いの数=星の数』となり、作品を出せば必ずランキング上位入りになる現象は、常々指摘されているところである。
これを解消するには誰から☆が送られたかまったく分からない、あるいは、同じ人には一定期間☆は送れないなどの、思い切った改革が必要となるだろう。
本文中、どんな駄作であっても交流さえ頑張れば上位になれることについてチクリと書かれているが、流石に「駄作」は云いすぎで、どんな人であっても「どうせまた知り合いからざくざく☆が集まってあっという間に上位になれるのだから駄作でいい」そんな舐めた気持ちで書いてはいない。
むしろ、「どうせまた一位になるのだから誰からも文句の出ないものを書こう」と気を引き締めているはずだ。
正当な評価を凌駕するほど、カクヨムではお返し目当ての星爆や、義理人情が多くを占めている。だからといって誰一人としてカクヨムでの順位や☆の数が、世間でも通用する自作の真価であるなどと、血迷ってはいない。信じている人がいたら愕きだ。
巧者が多いので☆を送る行為が良心に反したまったくのインチキかといえばそうでもない。
☆は、書き手同士の美しい励まし合いである。
今回の作品もいいね、読んだよ、そんな奨励である。
褒め合いしかせず、ぬるま湯に漬かっていると批判されるカクヨム。
しかし比較として取り上げている「なろう」とて、活発に批評をとり交わし合っているわけではない。
信頼できる指導者など、どちらにもいないことには変わりない。
「耳に痛い意見」といっても、他人の作品に対してその作品を向上させる的確な意見を出せる人のほうがはるかに希少だ。
大方の人は「こんな細かいところまで指摘できる俺サマすごいだろう」を披露しているだけであり、よりよい道を示すことはやっていない。
「自分のやり方や好きな作風」に寄せて「こうしろ」と述べていて、相手の作品にとっての改善ではないことが多い。
「他人の厳しい意見に耳を傾けないと成長しない」
とは、いかにも良さそうな格言であるが、その厳しい意見の中身が問題なのだ。
意見者とやらは、絶対に大成功してベストセラー化する秘伝のノウハウでも握っているのだろうか。
ではなぜ本人が大成功して印税生活を送っていないのだ。
他人の意見に耳を傾けないと成長しない?
「〇〇にしたほうがいい」と云われたら〇〇にし、
次の意見者が、
「〇〇ではなく◎◎にしたほうがいい」と云ったら◎◎に直すのか。
わたしに云わせれば、的確な意見で相手の作品を向上させることについても、相手に反感をもたれない人間性や、小説についての豊かな知識、善し悪しを見抜ける稀有な才能がいるものなのだ。
そのような人がもしいるのであれば、「その人の意見はきいた方がいい」と太鼓判を押せるだろう。
そんな人がその辺にごろごろといるものだろうか?
書き手は決して甘えてなどいない。
甘えのある者には、こんな、99%の人が報われることのない状態で何百万字も日々書くことは出来ない。
仮に、「カクヨムにいるお前たちは甘えている」とのたまう部外者に、書いている時のわたしたちの底なしの孤独や絶望の深さを味合わせてやれば、そんな人間は一日で自殺するか、発狂するか、二度と近寄ってはこないだろう。
カクヨムで出てくるスコアには甘えがある。それは否定しない。
誰もがその欠点については知っている。
ランキング上位はいつも同じグループの同じ顔触れだ。
だからといって手を抜いている人もいないのだ。
心配されているぬるま湯についても、ほとんどの人は「ぬるま湯だ」と分かっていて漬かっている。
星の数が一桁の階層にも、すごい書き手が埋もれていることを知っている。
お世辞をやり取りしたところで、云った者も云われた者も、次の瞬間にはすっと覚めている。
たとえ外から見てどんなに甘えていると映ったとしても、「甘えている」という心配だけは不要だ。
小説を書くということは、凍てついた荒野を独りで歩くこと。
書き手が自分自身に対して向けている厳しい目は、一度も書いたことのない者には到底耐えられないほど冷え切った、怖いものなのだから。
他のレビューワーさんがすでに書かれているように、創作活動における馴れ合いの弊害とSNS時代における交流のポジティブな部分を功罪両面から冷静に分析し、ユーモアを交えた筆致で書かれている優れたコラムです。
この内容をカクヨムのサイトで披露されたことを先ず評価したい。
全三本のコラムは、
①カクヨム的な評価をし合う交流を持つことでの弊害
②SNS的な交流の持つ意味と意義
③具体的な作品を一例にした創作におけるエコーチェンバー現象の実態
という内容で書かれており、読後は、傑作映画の三部作を見終わった時のような爽快感があります。
ウェブ上で創作活動を行う人間にとって、考えさせられることの多い内容なので、ぜひ、ご一読を!