第2話

スマートフォンが、変に震えた。なぜ変に、と言ったかというと、通知を知らせるような短い強い震えではなく、弱いが、数十秒間ずっと震え続けていたからだ。


「…ザ…ザザ…ギャ…ビャ…ババ」


変な音がする。変なことしか起こってないな。少し古い機種だから、もしかすると壊れてしまったのかもしれない。


「…聞こえますか?…自分は第1905宇宙、138銀河団、1083銀河、14惑星。シュナです」


僕はコンクリートの道路に、スマートフォンを落とした。

黒い画面から知らない女性の声で、意味の分からないことを言われたら、誰だってこうなると思う。


「ねぇ、アマチュアだからって。切らなくてもいいじゃない…。名乗るのがマナーってものでしょ?あなたは第何宇宙なの?」


アマチュア?無線のことか?しかしこれはスマートフォンだし、宇宙がなぜ出てくるのか分からない。


「もう!!あなたにとっては何度もやってて、飽き飽きしたものかもしれないけど。自分にとっては初めての宇宙間…ザザ…なのよ!!」


彼女の日本語は非常に流暢だったが、”宇宙間”の後の言葉は聞き取れなかった。

さながら外国語を変換した時にそのままの表記で出てきてしまったような。


「もういいさようなら!!もっとロマンチックなものだと思っていた!!」


もういいさようなら、彼女は恐らくこの通信?を切るということだろう。

よく分からない迷惑電話だ。なぜ逆ギレされなくちゃいけないのかも分からないし、彼女から切ってくれた方がいい。

そう、頭では分かっている。


「待って!!」


なんでだ?なんで僕はスマホを焦って拾ったんだ?


「何?」


彼女はまだ怒っているようだ。

なんで、僕はそれでも答えてくれて良かったと思っているんだ?


「僕は、地球、にいる」


彼女は宇宙人なのかもしれない。ひどい暑さにやられて、煮え切った脳が出した、バカみたいな、空想。


「いや、あなた。星の名前を言われたって分からない。

宇宙番号を言って」


彼女はそんな空想を、鼻で笑った。






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その恋は泡のようにして 家猫のノラ @ienekononora0116

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