いくら悪を成しても自分が悪と感じないサイコパスについて最良の入門書(※専門分野で深い書籍は他にあるが読みやすさと的確さが両立して一般人が読めるという意味において)とされる「良心を持たない人たち」(マーサ・スタウト著)に、良心を持たない人が最も欲しがるのは「同情」であると記されています。え? 金銭や他人の没落や場合によっては殺人衝動の充足じゃないの?
平凡な人なら悪意を持つと見なされる言動も、周囲から同情されていると「あの人がそこまでのことをするには深い訳があったはず」と思われ追求されません。悪事を成すための環境作りとして、悪意を悟られない状況を作る必要があります。ですから「同情」が何より先に欲しいのです。
え? そんなに効果があるの?
ええ、そうです。同情されると全く疑われません!
本作の展開は真にその通り。大変な犯行の主は全く疑われません。
で、その犯行の主は…… 正体を知ると憎めないのですよ。
え? 術中に嵌まってる?
たしかにそうかも……
犯人の巧妙さ、恐るべし!