宝石箱の正体
へこあゆ
第1話
僕の家の敷地の山小屋に入ると、宝石箱を見ることができる。
そんな言い伝えが僕の家にはあった。
しかし、山小屋に入ると災いが起こるとも言われていて、両親には絶対に行かないようにと言われていた。
僕にはみんなに隠していることがある。
それは、僕の部屋にずっと住んでいる僕の友達がいることだ。
僕以外の人は誰も気づいていない。
僕が学校で上級生にいじめられ、不登校になりかけたときも、そいつは「下を向いてばかりいるともっといじめられるぞ。堂々としていれば相手も悪口を言わなくなるぞ」
と励ましてくれた。
次の日学校で顔を引き締め、胸を張って歩くようにしたら、いじめていた上級生も面白くなくなったのか、僕をいじめなくなった。
彼とは苦楽を共にする、一番の親友だった。
ある日、部屋で彼から相談を持ちかけられた。
「ここにいると俺はお前とずっといてやれないかもしれない。その前にお前と山小屋の宝石を見つけにいきたいんだ」
そう言われ、僕たちは秘密の計画を立てた。
次の満月に決行することにした。
満月の日には村でのお祭りがある。お祭りには家族含む村中の人が出かける。
その隙を狙って山小屋に行くことにした。
そして満月の夜、僕たちは山奥に行った。
奥に進めば進むほど、異様な空気が立ち込めていて、僕は少し怖くなった。
その時、熊が現れた。
これは死ぬかもしれない。
僕たちは食べられないように、熊鈴を振りながら追い払うようにした。
僕らは熊に襲われたが、血塗れになりながら、山小屋にたどり着いた。
ついにか、と僕たちは心を光らせた。
山小屋の扉を通ると、そこには草原と満天の星空が広がっていた。
そのまま扉は消えてしまった。
僕は元いた世界には帰れないのだとため息をついたその時、彼はこう言った。
「俺は元々こちらの世界の住人だった。
あっちの世界だと誰も僕を見ることができない。だからお前に連れてきてもらったんだ。お前の世界を奪ってごめん。」
僕は少し寂しさが残ったが、僕は元の世界より彼と一緒にいられるこの世界で生きる方が魅力に感じた。
この世界では朝が来ない。ずっと星たちが僕らを見ている。
空の宝石を見ながら、僕たちは笑いあった。
宝石箱の正体 へこあゆ @hekoF91
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