夜の訪問者
日間田葉(ひまだ よう)
👁👁
夜中に喉が渇いてキッチンに行った。
家の周りに民家はなく明かりと言えば自宅の電灯だけだ。
キッチンの電気をつけたあとブラインドを下げた掃き出し窓から外を見るがそこは月明りもない暗闇だった。
冷蔵庫を開けるため窓から目を逸らそした刹那、目の端に白いものが映る。
白いものはキッチン前のベランダを左から右へと過ぎていったように見えた。
なんだろうと思ったら白いものがキッチンの窓の前に戻ってきてブラインドの隙間からこちらを覗いてきた。
暗い穴のような丸が二つ、白い影の中に異様に浮かんでいる。暗い穴はじーっと私を見ていた。
私は恐怖の余り声も出せず、冷蔵庫にあったものを闇雲に手に掴んだまま後ずさりした。
暗い穴はしばらくすると形が変わっていき最後に細い一本の筋になる。
メェェ~~~~~
山羊だった。
飼っている山羊が小屋から脱走したのだ。
キッチンに明かりがついたのでベランダに入ってきて中を覗いていたのだろう。
私は腹が立って持っていたもので殴ってやろうと窓を開けた。
ガラガラ
バシバシ
私が持っていたものは長ネギだった。
山羊は餌をくれたと思い嬉しそうに尻尾を振って長ネギを食べる。
ああああああ
一本150円もした長ネギではないか。
今は野菜が高いんだよ、なんで食うんだよ、このやろー。
なんてこったい。
私は貴重な長ネギを山羊に食べられてしまったのだ。
夜の訪問者はゲフっという音を残し満足気に小屋に帰っていった。
夜の訪問者 日間田葉(ひまだ よう) @himadayo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます