第3話side:柊沙良

私にとって彼女との出会いは、私の運命を変えたものだったと今は思うんです。




待ちに待った高校生活初日、校舎の綺麗さに惹かれて

私立雁ケ峰高校に入学した私は、新しい生活の始まりに

心が踊るような気持ちでした。


その気持ちを胸に、敷地内を校舎へ向かって進んでいると

校舎全体がよく見える広場にその人はいました。


スレンダーな体型、少し青みがかった黒髪のウルフカット

切れ目の長い目がより際立たせる凛々しい顔。


まさしく世間的にクール美女と呼ばれる人が校舎の方を眺めて

ぼーっとしていたのです。

まるでドラマのワンシーンを切り取ったような光景に私は声すらも

出なかったのを覚えています。


でも、その美女の放つ圧倒的な魅力を前に私は、声をかけざるを得なかった。

いや、声をかけさせられたのかもしれません。


「あ、あの!」


(あわわっ、声かけちゃった…!)


「ん、どうしたの?」


「い、いえ。急に立ち止まってぼーっとしてたからどうかしたのかなぁって

 思って……」


もちろんそんなこと最初から思っていたわけもなく、ただ見惚れていたのを

誤魔化すための後付けの理由でしかなかったんですが……


「あぁそういうこと。

 いや、何度見ても綺麗な校舎だなぁって思って。」


「わかります!綺麗ですよね。

 私、この校舎に憧れてこの学校に来たんです。

 あ、自己紹介してなかったですよね?

 私、柊沙良って言います!

 よろしくお願いします。」


(この人も同じこと思ってたんだ!

 えへへ、こんなこと思ってたの私だけかなって思い込んでたから

 共感してくれる人がいて安心したかも……

 それにしてもすごく綺麗な人だなぁ…)

 

「ん、私、音瀬氷織。よろしく。」


そう言うと彼女は校舎の方へ向かって歩き始めました。


(えっ?もう行っちゃった…

 正直、もうちょっとお話したかったんだけど…

 マイペースな人なのかな?

 それでもやっぱりクールなイメージが先行して

 かっこいいって思っちゃうなぁ……

 っていうか、私も早くクラス確認しに行かないと!

 入学初日に遅刻しましたなんて笑えないからね。)


なんてことを考えながら、この一年過ごすであろうクラスを確認するべく

足早に校舎の方へと向かいました。


(あの人の名前、音瀬氷織って言ってたよね。

 どこのクラスなんだろう。

 同じクラスだったらいいなぁ……)


彼女ともう一度出会い、中を深めることを望んで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼっち系女子、友達を作ろうと頑張ってみた結果、修羅場発生で大困惑。 チョコク @monako6201

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ