第4話 未来
「え、じゃあ私が何か悪いことしちゃったとか、嫌われたとかじゃないってこと?」
「そうだな。全部俺が悪いんだ」
美咲には過去の自分の情けなさやどうすればよかったか分からなかったことまで全部話した。
けれども上手く伝わっているかは分からない。
「なーんだ。そんなことか」
「そんなことって、俺は俺なりに凄い悩んだんだぞ」
「だからその悩みがそれっぽっちのことだったんだよ」
そうなのか。そうかもしれない。俺はずっと要らない心配をしていたんだ。
別にその時、声がかけられなくたって、次の日声をかければよかった。
同じ高校に行けなくたって、放課後に会うことだってできたはずだ。
俺が本当に気にしていたのは、美咲の隣に居てもいいのかという一つの不安だったのかもしれない。
「それにさ、この三か月間は確かに一緒に居なかったけどさ。今またこうして話せてる訳じゃん?それならそれで良いじゃん」
「それは美咲のおかげだよ。今日、俺を捕まえてくれたから。こうやって話せてるんだ」
「そんなことないよ」
俺は過去も今も美咲に助けられてばかりだ。
じゃあ俺はこれから何を美咲に与えてやれることができるだろうか。
「美咲」
「なあに」
「一緒の大学に行かない?」
「それは随分と急な話だね」
「そうだね。だけど俺はそうしたいとずっと前から思ってた。これからもずっと一緒に居たいんだ」
「ずっと一緒⁉そ、そういう言い方良くないよ。前々から思ってたけど、大和って真面目な顔で時々びっくりするようなこと言うよね」
それは初めて言われたので、少し驚いたが美咲が言うのならそうかもしれない。
自分より美咲の方が俺について詳しい可能性はあるのではないか。
「でもそれじゃ、今回の二の舞になっちゃうかもよ」
「……そうならないように、努力する」
「うーん。そうだなー私たちは今、誰よりも自由なんだよ。大学生になることだってできるし、卒業して働くこともできる。専門学校だって、短大だっていい。何にでもなれるんだよ」
そうか。別に今から同じ大学に行くなんて縛るようなことを言う必要がないのか。
高校生活だってあと三年間もあるし。
「でも一緒に居たいのは私も同じ。大学も行きたいところ何となく決めてるし」
「どこの大学?」
「それはまだ秘密。まだ確定した訳じゃないし、もう少ししたら教えてあげる」
人差し指を口に当てて、はにかむ美咲。
「分かった。じゃあさ、今から少しずつ勉強しようよ。それぞれの目標のためにさ」
「良いねぇ!それじゃあさっそく、大和の家にレッツゴー!」
「本当に今からやるのな」
「もちろん!」
喫茶店でも勉強はできると思ったのだが、一度家に帰って勉強道具を取りに帰るらしい。
「こうやってこの道を一緒に通るのも久しぶりだね」
「そうだな。違う制服着て、通るのもちょっと良いな」
「確かに!写真撮ろうよ!」
写真は撮るの恥ずかしいけど、今の美咲のお願いを断れるはずがない。
美咲は俺の身体を引き寄せて、一枚二枚とシャッターを押した。
「近いな相変わらず」
「大和にはこれぐらいで良いでしょ?」
「……俺だけなら何も問題ないよ」
「はいはい。大和だけだよーこの勘違いボーイちゃん」
「ちょ、その呼び方はやめろって」
「はいはーい」
本当に分かってるのか?
だけど勘違いで本当に良かった。
灰色だったこの三か月は俺にとって苦痛でしかなかった。
しかし俺と美咲は三か月前とは違う形でやり直すことができそうだ。
それにしても美咲のやつ。俺の気持ちに気づいているんだか、いないのだか。
こうして勉強を頑張ることの他に、俺はもう一つ全く別の方面の目標を心の内に掲げるのだった。
幼馴染との未来 結城・U・雄大 @Yuki_U_Yudai
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