書籍化作家さんからのお悩み相談にお応えする。小説序盤問題と創作スタイル問題。作品の価値とは

文字塚

書籍化作家と読む系企画者じゃ釣り合わないが

 どうも、なろうエッセイ日間ランキング一位です。

 突然ですが、私はとある作家さんから「有名なろうRT企画主」とか名付けられた経験があります。そのお方、普段のペンネームはカワウソうーたんさんなのですが、商業ベースでは「川獺右端」とし読みは同じ。そんな川獺さんの新作がこの度発売されます。

「大相撲令嬢」「大相撲令嬢Z」に続く新たな作品、


「転生聖女は友情エンドを目指す! ~腐女子なのに乙女ゲームの世界に転生しちゃいましたが親友キャラとイチャイチャ百合しながら悪役令嬢と派閥抗争してます~」


 が、8/9に発売されます!

 当然電子書籍もあり、Amazonなどで購入出来る!

 いよ! おめでとうございます!

 さてさて、その作者さんのデビュー作のあとがきに、私とのエピソードが掲載されてます。一応、名前だけは書籍に載っているという奇妙な経験をしているんですよ(笑) 名付けられた方は複数いて、確か全部で三人ぐらいだったと思う。


 そんな私はいわゆる「読む系企画者」という存在であり、時折現X上で企画を行ってます。私が一方的に読むだけの企画であり、参加者さんのレベルや関係性に応じ、気がついたことを指摘したりするわけですね。ちょっとしたアドバイスと考えて下さい。

 私は読み合いが大嫌いなので、あくまで参加者さんの作品を拝読する応援企画という感じ。前述の川獺さんも、デビュー前に参加されたことでちょっとした縁が出来ました。まだ作品が評価される前、川獺さんがデビューする以前の話だから随分前の話です。

 なんとなく参加されたとは思いますが、作品を拝見し、問題点は一瞬で発覚(笑) 秒で解決しました。それが発売の運びとなり、私も感慨深い。

 自己紹介も兼ねたエピソードはここまで。さあ本題に入ろう。


□自称一発屋、商業作品を持つ作家さんからのお悩み相談

 商業作品を持つ作家さんが私の読む系企画に参加することは珍しくない。他の企画者も似たような経験はあると思う。ただ今回は明確なお悩み相談であり、具体的なポイントについてどうすればいいか――と、ご依頼のような形となっている。

 うん、これは記すと長くなる奴。Xでは無理だ(笑) 致し方ないエッセイ行き、と今から記すわけです。既にデビューしている作家さんのお悩み相談。皆さんの参考にもなるかもしれない。ではいこう。


□一発屋って紹介しろと無理強いする、灰猫さんきちさんの相談内容

 灰猫さんは、


「転生大魔女の異世界暮らし~古代ローマ風国家で始める魔法研究~」


 という作品で2024/3にデビューされている。続編、


「転生大魔女の異世界暮らしⅡ~古代ローマ風国家で始める魔法研究~」


 こちらは2024/5発売ということなので、最近の話だ。

 コミカライズもされている。

 堂々たる商業ベースの作品を持つ方だが、ご本人から「一発屋と書いてくれ」と言われているので、致し方ない一発屋と紹介しておこう(笑) では相談内容に移る。


「物語の序盤が冗長過ぎると思う。自覚はあるが、どこをどう切るか踏ん切りが付かない。どうすればいいか、さっさとアドバイス寄越せ」


 はい、最後の「アドバイス寄越せ」は当然仰っていないが、意訳するとこんな感じです(笑) そこで私は、普段記している常設エッセイに記した「アメリカ探偵作家倶楽部の金言」というものに目を通すことをお薦めした。

「カクヨム歴2年ぐらいな奴の呟き」というものの一エピソード。

https://kakuyomu.jp/works/16817330652317934856/episodes/16818093081417682700


 簡単に言うと、


「序盤から劇的対立を演出しろ」

「見せ場は早くつくれ」

「読者の見切りが早くなっている」


 と、1976年段階で既に記されていた話を紹介したもの。1976年だよ? 驚いた? 昔から序盤問題は論じられ、既に指摘されている。するとこれに目を通した灰猫さんは、一瞬で自作の問題点を見抜いた。


「自作における劇的対立とは何か」と。


 さすがは一発屋、商業作品を持つ作家は違う。ちなみに「一発屋」って本人が言えって言うから連呼しているので、他意はない。なんならご本人に確認するといい(笑)

 劇的対立とは何か。ジャンルにもよるが要はドラマ、ドラマ性、見せ場と考えて欲しい。小説に限らず「掴みが大事」というシンプルな話だ。では相談された作品に対策法はあるのか。


 ――我々読む系探索隊は真相を探る為、アマゾンの奥地を経由し、なろうのURLから目的の作品に向かうのであった……その後、探索隊を見た者はいない。完。


□一瞬で分かる特徴。問題とは言えないが、私は問題とする

 なろうの奥地に向かうと目的の「古代ローマ風異世界転移お仕事系、恋愛あり作品」を発見し、我々探索隊は一斉に沸いた。抱き合う者から殴り合う者まで出る始末で、道中いざこざがあったことが推察される。

 そんなトラブル続きの旅だったが、とにかく目的地にはたどり着いたのだ。完。


 ーーさて、くだんの序盤を拝読するといわゆる異世界転移系、そのテンプレが描かれていた。なるほど、特に見せ場はない。ただ、不必要かと言われると判断しかねる。

 作者が必要と思うならそのままでいいと私は考えた。これは選択の問題で、作者が責任を持って描くものだ。外野がどうこう言うものではない。ただ、相談されたならば多少踏み込んだことは言える(笑)


 序盤を読んだ私は次に小説情報ページに向かった。カクヨムなら作品のトップページにあたる。そこですぐに問題点に気付いた。そして最初の結論を「一瞬」で出した。

 だがそれを伝えるのは忍びない。

 ちなみにスコアではない。

 ポイントどうこうは「公募前提」の場合どうでもいい。一万や二万、四万ポイント持っていても書籍化されていない作品はある。でなきゃトップランカーは全作品書籍化されている。そうではないのだ。だからまず、二つ目の結論、


「どうするかは目標、目的によって変わります。あえて言うなら序盤全部カットして、すぐお仕事シーンから描きます」


 と伝えた。

 先の「序盤から劇的対立をつくる」という、今や漫画から映像作品まで当然のように使われる演出、構成の基本を私なら実行すると伝えたわけだ。ではなぜ最初の結論を伝えられなかったのか。

 それはもし「作品に思い入れがあったら」という懸念である。

 大体結論は見えてきたと思う。だから記そう。


□私は完結させろと思った

 私が確認したのは作品の文字数である。

 22万文字も記している。

 ちょっと待って欲しい。


 長編コンテストは大抵10万文字からであり、いくらなんでも書き過ぎだ。横溝正史ミステリー&ホラー大賞でも10万文字から20万文字までであり、公募前提だと多過ぎる。

 確かに前述の川獺さんは、二百万文字以上書いた作品が発売の運びとなった。他にも化け物のような文字数で商業化された作品はあるだろう。だが、私はお奨めしない。理由は色々ある。


 まず一つ「時間と労力の無駄」

 はい、カワウソさんにぶん殴られる案件発生(笑)

「書籍化作家になってから言え」と怒られるかもしれない。だが違う、カワウソさんこと川獺さんは他の作品も同時に連載している。つまり、化け物級の速筆なのだ。化け物クラスではなくとも、かなり筆が早い。


 次に「作品に拘泥するな。もっと数書けたでしょ」というものがある。これだけ書けるなら10万文字作品いくつ書けただろうか。もったいない。

 さて最後だ。超長編を書いて報われればいいが、


「あまり長く書き続けていると、物語の畳み方も分からない奴。構成がなってない奴」


 と判断される可能性がある。もちろん逆に、


「これだけの文字数を書ける作家なら、仕事を依頼する価値がある」


 と判断される可能性もあるだろう。

 結局はどちらを選ぶのか、という創作スタイルの話に落ち着く。

 結論から言うと、灰猫さんは完結させるらしい。私のエッセイの方が遅れるという大惨事。というより、さすがは書籍化作家兼一発屋。結論を出すのが早い。というか既にデビューされてるので、拘泥と畳み方についての懸念はないだろう。


□短編、中編、長編、超長編の価値

 考えて欲しい。短編のスコアに意味はあるだろうか。

 私は最近なろうのエッセイランキングで日間一位になった。

 短編である。

 仮にこれが小説であっても「長編コンテスト参加資格を満たさない作品」に価値はほとんどない。もちろんあなたが価値ありと判断するなら、私を絶賛するといい。いいよ別に、絶賛してくれて。


 ん? 違う? 作品? 俺の小説はどうなのってこと?

 ああ、推理文芸で「中華風ドラッグストアの前でずっと独り言呟いてる奴」的なのを上回って一位になったことあるよ。アニメ化もされた奴。超有名。日間ランキングでだけどね。「侯爵令嬢の華麗なる追放劇」って作品。俺のなろう代表作だよ。スコアは低いけど。

 話が逸れた。そう、作品が大切なのだ。エッセイとかは余計価値がない。こんなものは気分転換であり、PVが増えサイト側が喜ぶだけだ。つまりお互い損はない(笑)


 小説というものは、


「文字数が少なければ少ない程、多ければ多い程価値が下がる」


 例外は商業作品になった時である。

 あとは京極夏彦のサイコロ本とかかな(笑)

 そういう需要があるなら応じればいいが、私はお奨めしない。

 これは私の選択で、押しつけようもない話だ。

 現状で言えばなろう、カクヨム共に短編が幅を利かせている。

 が、まあ意味はないな。

 短編を書く意味はあるが、長編商業ベースを目指すなら意味はない。

 事実、カクヨムコン8の短編部門において、コンテストの結果ページにこんな感じのことが記されていた。


「現状短編に商業的価値はないですが――」


 うん知ってる。でも参加した。

 というわけで灰猫さん、さっさと相談してきた作品完結させて次へ――完結させるんだったね。灰猫さん……そりゃないよ。先に言わせてよ(笑) というわけで我々実はライバル関係。というかネトコンやらに参加する方は皆ライバル。

 だから言いたい。


「何百万文字書いても自由だ」と。


 そこに意味はないが。

 ただし例外がある。先に記した通り超長編を書きながら他の作品も書けるという方だ。他にもそれを実行出来る方を私は知っている。どこまでも我が道を往く、最強の自由人だ。


 本業の傍らテレビに出演しては料理を披露し、本業で県から表彰され、食育の教育活動も行う料理研究家。研究会とかにも参加するし、本業の為地方遠征に出ることもある。趣味は小説。エッセイから物語までなんでも書く。

 もう一度言うぞ、本業を怠らずやってしまうのだ。

 料理研究家は本業ではない。

 こうなると異次元過ぎて、同じ人間とは思えない。

 たまに「時間が足りん」と呟く姿を見て、ああ同じ人間だったんだと安堵する存在である(笑)


 でも皆は違う。こうはなれない。

 10万文字から大体20万文字で作品は完成させなさい。

 それがコンテストのメインストリームなのだから。

 灰猫さん、これが私の結論かつメッセージです!

 頑張って下さい! みんなもね!

 では!


□と言いたいところだが

 以降プロのお悩み相談は金を取る……(笑)

 ちなみにカワウソさんにもそう伝えています(笑)

 私はアドバイザーではないので、今回は分かりやすくてよかった。

 ではではこれにて終了。またどこかで!


・これに対する別解はこちら

第55話 10万文字小説vs大作、又は100万文字以上の小説

https://kakuyomu.jp/works/16817330652317934856/episodes/16818093083857438885

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書籍化作家さんからのお悩み相談にお応えする。小説序盤問題と創作スタイル問題。作品の価値とは 文字塚 @mojizuka

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